2025年8月27日
ポイント
●ASK1-p38 MAPK経路が抗ウイルス応答の鍵タンパク質MAVSのリン酸化を誘導することを発見。
●MAVSリン酸化が抗ウイルス応答であるIFN産生を選択的に促進することを発見。
●細胞ストレスが免疫応答を調整する分子機構を特定。
概要
北海道大学遺伝子病制御研究所の岡崎朋彦准教授らの研究グループは、東京大学と徳島大学との共同研究により、抗ウイルス応答において中心的な役割を担うタンパク質MAVS(ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質)が、細胞ストレスに起因するシグナル経路によってリン酸化修飾を受けることで、インターフェロン(IFN)産生が促進されることを明らかにしました。
これまでにも、細胞ストレスが抗ウイルス免疫応答に影響を及ぼす可能性は示唆されていましたが、その分子機構の詳細は不明でした。
本研究では、ストレス応答に関わるASKファミリーに着目し、ASK1がp38 MAPKを介して、MAVSのリン酸化を誘導することを発見しました。さらに、このリン酸化が、IFN応答を選択的に増強する一方で、感染細胞のアポトーシスには影響を与えないことを明らかにしました。つまり、細胞ストレスはMAVSのリン酸化を介して、免疫応答の方向性を制御していることが示されました。
本研究で明らかになった分子機構は、ウイルス感染症に対する新たな治療戦略の糸口となると期待されます。
なお、本研究成果は、2025年8月13日(水)公開のiScience誌にオンライン掲載されました。
論文名:MAVS phosphorylation acts as cellular stress sensor that modulates antiviral immunity (MAVSのリン酸化が抗ウイルス免疫を調節するストレスセンサーとして機能する)
URL:https://doi.org/10.1016/j.isci.2025.113256
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本研究の概要図
細胞ストレスは、ASK1-p38 MAPK経路でMAVSのリン酸化を誘導する。MAVSのリン酸化はIFN産生を選択的に増強させ、ウイルスの封じ込めに貢献する。