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動物福祉に対する態度を日英で比較~日本の獣医師は英国よりも動物の行動を重視しない傾向~(One Healthリサーチセンター 特任助教 大谷祐紀)

2025年8月29日

ポイント

●獣医師や動物行動/福祉研究者が持つ動物福祉の考え方について社会科学的に日英で比較。
●日英ともに、動物の「5つの自由」に優先順位がつけられていることを可視化。
●英国と比較し、日本では動物の「正常な行動を発現する自由」が重要視されない傾向。

概要

北海道大学One Healthリサーチセンターの大谷祐紀特任助教(研究当時 同大学大学院獣医学研究院博士研究員、エジンバラ大学客員博士研究員)らの研究グループは、日英の獣医師及び動物行動/福祉学研究者を対象としたアンケート調査を行い、両国の動物福祉への考え方の差異や共通点を調べました。

動物福祉は英国から始まった概念で「動物の精神的・身体的状態」と定義されています。近年、多様性や持続可能性への意識の高まりから、動物福祉への配慮が国際的な関心事となっています。動物福祉には基本原則があり、動物は「飢え・渇きからの自由」「恐怖・抑圧からの自由」「不快からの自由」「痛み・怪我・疾病からの自由」「正常な行動を発現する自由」の「5つの自由」が保障されることが重要です。一方で、動物福祉は「科学的、倫理的、経済的、文化的、社会的、宗教的、政治的な側面を持つ複雑で多面的な概念」とも定義され、様々な要因がその理解や解釈、社会実装に影響を与えます。研究グループは、日本土着の動物への考え方や価値観、社会通念、教育が、動物福祉に対する考え方に影響すると仮説を立て、日本と英国で獣医師や動物福祉の研究者を対象としたアンケート調査を行いました。

その結果、日本と英国の獣医師・動物福祉学研究者は、動物福祉に対して概ね同様の価値観を持っている一方、「正常な行動を発現する自由」への考えが異なり、その違いが両国で推奨されている動物の管理方法にも影響していることが分かりました。

私たちの生活は、たくさんの動物によって支えられています。動物福祉は、動物と人がより良い関係で暮らす社会の基礎となる考え方です。一方、日本で育まれてきた動物観や文化と、英国発祥である動物福祉の両立にはバランスの取れた熟議が必要です。本研究では、英国と日本の共通点・差異を社会科学的に可視化することで、議論の一助となる客観的データを提供しました。

なお、本研究成果は、202586日(水)公開のAnimal Welfare誌にオンライン掲載されました。

論文名:Cross-cultural variation in understanding of animal welfare principles and animal management practices among veterinary and animal welfare professionals in the UK and Japan(日英の獣医師・動物福祉学研究者が有する動物福祉の原則及び管理方法に対する理解の文化差)
URL:https://doi.org/10.1017/awf.2025.10026

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動物福祉の基本原則である「5つの自由」について、日英で重み付けが異なった。この差異が動物飼養の多様性に直結する可能性。