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高山帯のマルハナバチは温暖化でどうなるか?~市民ボランティアとの共同研究で初めて明らかになった高山植物のポリネーターの動向~(地球環境科学研究院 特任准教授 工藤 岳)

2025年9月16日

ポイント

●12年間のモニタリング調査で高山植物群落の開花期変動とマルハナバチの個体群動態把握に成功。
●高山植物の開花時期や気温変動とマルハナバチの個体数変動との関連性を初めて解明。
●地球温暖化が高山生態系の送粉機能に及ぼす影響予測の進展に期待。

概要

北海道大学大学院地球環境科学研究院の工藤 岳特任准教授らの研究グループは、北海道大雪山系の高山帯2地域で12年間にわたる高山植物の開花時期とマルハナバチ個体数のモニタリングデータから、気候変動がマルハナバチの個体群変動に及ぼす影響を解析しました。雪渓跡地の雪田群落は働きバチの重要な採餌場所ですが、開花時期は雪解け状況により大きく年変動します。気温が1℃上昇し、融雪が10日早まった場合、高山帯全体の開花期間は9.2日短縮されると予測されました。一方で、働きバチの出現時期は気温や融雪時期の影響を受けず、毎年8月上旬に個体数がピークに達しました。そのため、雪解けが早く進んだ年には、雪田群落の開花ピークは働きバチ出現ピークよりも先行し、両者に「季節性のミスマッチ(フェノロジカルミスマッチ)」が起こることが分かりました。

マルハナバチの個体数は年変動が大きく、変動パターンは種や地域で異なる挙動を示しました。夏の高温は高山性のマルハナバチ種に負の影響を及ぼし、猛暑の年には個体数が減少しました。一方で、季節性のミスマッチがもたらす影響は種や地域で異なっていました。高山帯に定住する短舌種のエゾオオマルハナバチは、ミスマッチの翌年に個体数が減少しました。一方で、中舌種のエゾヒメマルハナバチと、森林帯から高山帯に採餌に訪れる長舌種のエゾナガマルハナバチは、アザミ類が多い地域でミスマッチの翌年に個体数が増加しました。アザミ類の開花はシーズン後半に始まるので、開花が早く進んだ年は、アザミを好んで利用する中・長舌種にとって有利に作用したと考えられます。

温暖化により高山帯のマルハナバチ種組成が変化する可能性が示されました。温暖化がマルハナバチと高山植物の共生関係に及ぼす影響を予測するには、地域性を考慮したモデルの構築が重要です。

なお、本研究成果は2025823日(土)公開のOecologia誌に掲載されました。

論文名:Phenological mismatch between alpine flowers and bumble bees: Its mechanism and impacts on the population dynamics of bumble bees(高山植物の開花時期とマルハナバチとのフェノロジカルミスマッチ:そのメカニズムとマルハナバチの個体群動態への影響)
URL:https://doi.org/10.1007/s00442-025-05775-4

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マルハナバチの出現ピークと雪田群落の開花ピーク日とのズレ(ミスマッチ)は、雪解けが早く進んだ年に増大する。ミスマッチが大きいほど、利用できる植物種数は減少する。ミスマッチが起こる頻度は、温暖化により増大すると予測される。