2025年9月18日
ポイント
●がんドライバーPPM1Dがユビキチン化に依らず直接プロテアソームで分解されることを発見。
●分解はPPM1Dのカルボキシル末端領域を介して起こることを特定。
●PPM1D阻害剤とプロテアソーム阻害剤の併用でがん治療に対して相乗的な効果。
概要
北海道大学大学院医学院博士課程4年の高橋正樹氏、同大学大学院医学研究院の渡部 昌講師、畠山鎮次教授らの研究グループは、がんドライバー遺伝子産物であり、脱リン酸化酵素でもあるPPM1Dが、従来知られていた「ユビキチン」という目印を付ける経路を介さずに、直接プロテアソームで分解されることを発見しました。この分解はPPM1Dのカルボキシル末端領域を介して起こることも明らかにしました。
細胞はタンパク質の合成と分解による品質管理で機能を維持していますが、その破綻はがんの要因となります。がんドライバーPPM1Dは腫瘍抑制因子p53を抑え進行や耐性を助長しますが、その分解機構は未解明であり、本研究ではその仕組みを解析しました。細胞内のタンパク質分解は通常、ユビキチンを付けてからプロテアソームに送られる仕組み(ユビキチン依存的分解)で行われます。しかし今回の発見は、PPM1Dがユビキチンを介さずに直接プロテアソームによって迅速に分解される新しい経路を持つことを示し、この酵素の量を素早く調節するための重要なメカニズムである可能性が考えられます。
さらにPPM1D阻害薬とプロテアソーム阻害薬を併用すると、がん細胞に対して相乗的な効果を示すことを発見しました。これらの知見は、PPM1Dの異常活性化が関わるがんの新しい治療法開発にもつながることが期待されます。
なお、研究成果は2025年9月11日(木)公開のJournal of Biomedical Science誌にオンライン掲載されました。
論文名:PPM1D is directly degraded by proteasomes in a ubiquitination-independent manner through its carboxyl-terminal region.(PPM1Dはユビキチン化に依存しない方法でカルボキシル末端領域を介してプロテアソームによって直接分解される)
URL:https://doi.org/10.1186/s12929-025-01185-z
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