2025年10月24日
ポイント
●細胞内の微量なmicroRNA(miRNA)の分布や局所濃度を可視化し、簡便に定量できる技術を開発。
●独自の「二足歩行型DNAウォーカー」設計で、細胞環境の影響を補正し、高精度な検出を実現。
●miRNAは疾病に関連する重要なバイオマーカーで、診断や治療に応用可能。
概要
北海道大学電子科学研究所の三友秀之准教授、居城邦治教授、同大学大学院生命科学院博士後期課程の卫 文婷氏らの研究グループは、細胞内のmicroRNA(miRNA)濃度を簡便かつ正確に定量する新技術を開発しました。
がんや感染症をはじめとする多くの疾病は、細胞内miRNAの量の変化と密接に関係しており、miRNAは有力な疾患バイオマーカーとして注目されています。そのため、生きた細胞内でmiRNAを正確に定量する技術の開発は、診断や新しい治療法の開発に直結する重要な課題とされてきました。
本研究では、ナノスケールのDNAマシンを応用し、「二足歩行型DNAウォーカー」を基盤とした検出システムを構築しました。このDNAナノマシンは、複雑な抽出や前処理を必要とせず、生きた細胞をそのまま観察できる簡便さを有しています。さらに、このセンサーは二本の「脚」を持ち、一方が検出シグナルを、もう一方が内部基準シグナルを同時に出す仕組みを備えています。これにより、細胞内の局所環境(イオン濃度など)の違いによって生じる誤差をその場で補正し、従来法では困難であった高精度な定量測定を可能にしました。共焦点蛍光イメージングを用いることで、生きたままの細胞内部におけるmiRNAの分布を可視化することにも成功しました。
本成果は、がん診断や個別化医療、創薬研究の発展に大きく貢献することが期待されます。なお、本研究成果は、2025年10月21日(火)公開のAnalytical Chemistry誌に掲載されました。また、今回の研究成果が高く評価され、本研究が掲載誌の表紙に選出されました。
論文名:Highly Sensitive and Quantitative Detection of microRNA-21 in Cells Using Bipedal DNA Walker-Based Ratiometric Fluorescent Sensor(二足歩行型DNAウォーカー比率蛍光センサーによる細胞内microRNA-21の高感度・定量検出)
URL:https://doi.org/10.1021/acs.analchem.5c04705
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