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アルデヒドオキシダーゼの阻害機構に関する新規知見~新たな薬物間相互作用の可能性~(薬学研究院 教授 小林正紀)

2025年10月7日

ポイント

●統合失調症治療薬クエチアピンとその代謝物によるアルデヒドオキシダーゼの機能抑制効果を発見。
●睡眠薬であるフルニトラゼパムの代謝を競合的に阻害することを解明。
●これまで明らかにされていないアルデヒドオキシダーゼを介した薬物間相互作用の重要性を示唆。

概要

北海道大学大学院薬学研究院の上田一奈太助教、鳴海克哉講師、小林正紀教授らの研究グループは、多元受容体作用抗精神病薬クエチアピンが代謝酵素アルデヒドオキシダーゼ(AOX)の還元反応に対し、競合的な阻害効果を示すことを明らかにしました。

AOXは、様々な抗がん剤や免疫抑制剤、睡眠薬の代謝を行うことで、薬物を体外に排泄しやすい構造へと変化させる肝代謝酵素です。アルデヒド基を有する化合物に限らず、幅広い薬物の代謝に関わることから、医薬品の有効性や副作用に関連している代謝酵素であると考えられています。しかしながら、実際の臨床現場におけるAOXを介した薬物間相互作用の危険性に関する知見は少なく、薬物動態におけるAOXの重要性はほとんど明らかになっていません。

本研究では、統合失調症治療薬であるクエチアピン及びその代謝物(N-デスメチル体、カルボン酸体、スルホキシド体)がAOXを阻害することを明らかにしました。またその阻害様式として、酸化反応に対しては非競合的に阻害する一方で、還元基質であるフルニトラゼパムの還元反応に対し競合的に阻害することから、クエチアピンはAOXの還元部位に結合する可能性を見出しました。本研究により、これまで評価されていなかった多元受容体作用抗精神病薬によるAOX阻害様式を解明するとともに、その代謝産物もAOXの代謝活性を阻害することを発見しました。これらの知見は、臨床におけるAOXの重要性並びに新たな薬物間相互作用の解明に繋がることが期待されます。

なお、本研究成果は、2025924日(水)公開のDrug Metabolism and Disposition誌にオンライン掲載されました。

論文名:論文名:Quetiapine Competitively Inhibits Aldehyde Oxidase-Mediated
Reduction(クエチアピンはアルデヒドオキシダーゼによる還元反応に対し競合的阻
害効果を示す)
URL:https://doi.org/10.1016/j.dmd.2025.100169

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アルデヒドオキシダーゼに対するクエチアピンの阻害様式の模式図