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ジャンプ着地時のアキレス腱負荷を減らす指導法を解明~アキレス腱障害の予防やリハビリテーションへの応用に期待~(保健科学研究院 助教 越野裕太)

2025年10月8日

ポイント

●股関節や膝の屈曲、着地音、荷重位置の指導で、着地時のアキレス腱負荷が低下することを発見。
●特に股関節を深く曲げる指導によって、アキレス腱負荷が大きく低下することを解明。
●股関節を深く曲げる着地指導は、アキレス腱障害の予防やリハビリテーションで有効な可能性。

概要

北海道大学大学院保健科学研究院の越野裕太助教らの研究グループは、ジャンプ着地動作時に股関節を深く曲げる指導によって、アキレス腱負荷を安全に減少できることを明らかにしました。

アキレス腱障害はランニングやジャンプを行う競技者に多く発生し、その予防やリハビリテーションにおいてはアキレス腱にかかる負荷の管理が重要とされています。そこで本研究では、ジャンプ着地時の指導方法の違いがアキレス腱負荷に与える影響を検討しました。

健常成人23名を対象に、5種類の着地指導条件(指導なしの自然条件、股関節を深く曲げる指導、膝関節を深く曲げる指導、着地音を抑える指導、足底の荷重位置を後方へ寄せる指導)で、両脚によるジャンプ着地を実施しました。三次元動作解析システムと床反力計を用い、アキレス腱負荷の最大値と増加速度(負荷が加わる速さ)、床反力、下肢関節角度を算出しました。

すべての指導条件で、アキレス腱負荷の最大値は減少しました。特に「股関節を深く曲げる」指導では他の指導よりも大きく減少し、同時にアキレス腱負荷の増加速度も減少しました。「着地音を抑える指導」もアキレス腱負荷の最大値と増加速度を低下させましたが、その効果は「股関節を深く曲げる」指導ほど大きくはありませんでした。一方、「足底の荷重位置を後方へ寄せる」指導では負荷の最大値は減少しましたが、アキレス腱負荷の増加速度や床反力はむしろ増加しました。その結果、衝撃の強い着地となり、他の外傷・障害リスクを高める可能性が示唆されました。

本研究の成果は、アキレス腱障害の予防やリハビリテーションに活用できる着地指導法を示すものです。特に「股関節を深く曲げる」指導が、安全かつ効果的であることを明らかにしました。

なお、本研究成果は、2025年8月29日(金)公開のKnee Surgery, Sports Traumatology, Arthroscopy誌にオンライン掲載されました。

論文名:Effects of landing instructions on Achilles tendon load: Emphasising hip flexion as the optimal strategy(着地時の指導によるアキレス腱負荷の変化:股関節屈曲の重要性)
URL:https://doi.org/10.1002/ksa.70006

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台から前方にジャンプして両脚で着地する際、股関節を深く曲げるよう指導すると、アキレス腱負荷の最大値と増加速度が減少する。