2025年10月23日
北海道大学
大阪大学
京都府立医科大学
ポイント
●光で分子の情報を調べる「分光画像」に対し、まわりの化学環境の類似性に注目する解析法を開発。
●従来の「形の観察」や「化学情報だけ」の分析で得ることができなかった情報を捉えることに成功。
●感度が低い・未知の物質パターンでも検出できるため、生体組織内の異物検出への応用に期待。
概要
北海道大学総合イノベーション創発機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)・同大学電子科学研究所の小松崎民樹教授らの研究グループは、大阪大学大学院工学研究科の藤田克昌教授、京都府立医科大学大学院医学研究科の原田義規教授らと共同で、ラマン分光計測に対して、化学的な周辺環境を表す新しい尺度を定義し、それに基づいた新しい解析手法の開発に成功しました。この顕微鏡は、生体組織を光で調べて、「分子の種類や量」に関する情報を画像のように記録できます。ただし、従来の分析では「分子の種類そのもの」に注目するだけで、まわりの環境との関係はあまり考えられていませんでした。
今回、研究チームは、各点の分子情報とその周囲との違い(空間不均一性)を数値化し、それをもとに組織を分類する手法を開発しました。その結果、従来見えなかった病気の特徴や、化学的に目立たない異物を捉えることに成功しました。この成果は、従来困難だった「信号が弱い物質」や「未知の物質」を見つけ出す道を開きます。特に、アスベストやマイクロプラスチックの検出、腫瘍の中に局所的に存在する特殊な分子の発見などへの応用が期待されます。
なお、本研究成果は、日本時間2025年10月13日(月)公開のScientific Reportsにオンライン掲載されました。
論文名:Integrating spatial and chemical information enhances differentiation of non-alcoholic steatohepatitis states in Raman imaging(空間-化学情報がラマンイメージングにおける非アルコール性脂肪肝炎の鑑別能力の向上させる)
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-025-17495-z
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街の地図と肝組織のラマン画像の対比。RGBの三色に比して、数百色にも相当するラマン画像においても空間方向の情報を加味することで診断精度が向上することが判明。



















