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運動による生物時計の調節に性差が存在:~メスマウスを用いた世界初の検証~(教育学研究院 准教授 山仲勇二郎)

2025年10月28日

ポイント

●メスのマウスを用いて習慣的な運動による行動リズムの同調機構を世界で初めて検証。
●行動リズムを指標に恒常暗下での習慣的な運動に対する生物時計の調節に性差があることを発見。
●性差に注目した生物時計研究や女性の健康支援プログラムの開発に繋がる科学的根拠を提供。

概要

北海道大学大学院教育学研究院の山仲勇二郎准教授らの研究グループは、習慣的な運動による生物時計の調節に性差が存在することを、世界で初めて明らかにしました。

生物時計は、約24時間周期で自律的に振動する内因性の時間調節機構であり、ヒトを含む哺乳類では、脳内視床下部の視交叉上核(SCN)がその中枢として機能しています。SCNは、地球の自転による明暗サイクルに同調するとともに、全身の末梢臓器や中枢神経系に時刻情報を伝達することで、行動リズムと生理機能を時間的に統合しています。

生物時計の調節は主に光によって行われますが、運動などの非光刺激によっても調節可能であることが知られています。しかし、これまでの研究の多くはオスのマウスを対象としており、習慣的な運動スケジュールによる生物時計の調節に性差があるかどうかは未検証でした。

そこで本研究では、メスのマウスを用いて、習慣的な運動スケジュールが生物時計に与える影響を、自発的な行動リズムを指標として検証しました。光のない環境(恒常暗条件)下で、行動リズムがフリーランしているメスマウスに対し、毎日決まった時間に回転輪付きの新しいケージへ移動させ、3時間の自発的な輪回し運動を行わせました。

その結果、メスマウスの行動リズムが運動スケジュールに同調することが確認されましたが、同調が達成された時刻は、過去に報告されていたオスマウスの結果から予測される時刻とは異なっていました。研究グループは、同腹のオス・メスマウスを用いて運動刺激に対する位相反応曲線を作成し、オスとメスで同調時刻が異なることを位相反応曲線から説明可能であることを示しました。これらの研究により、運動による生物時計の調節機構に性差が存在することを世界で初めて実験的に証明しました。

これらの成果は、女性における体内時計の調節や睡眠・健康管理の個別化に向けた基礎的知見となるものであり、今後の時間生物学研究において性差の重要性を示すものです。

なお本研究成果は、20251020日(月)公開のAmerican Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology誌にオンライン掲載されました。

論文名:Nonphotic Entrainment and Phase-Shifting of Circadian Rhythms by Novelty-Induced Wheel Running in Female Mice(新奇環境下の輪回し運動がメスマウスの体内時計に与える影響:非光同調と位相変化の検証)
URL:https://doi.org/10.1152/ajpregu.00194.2025

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