2025年10月31日
ポイント
●既存のワクチンでは子牛の感染症を防御できない場合があり、新たな技術の開発が必要。
●子牛へのプロバイオティクス給与により、ワクチンに対する免疫応答が増強することを証明。
●薬剤耐性菌問題の解決にも貢献し、健康な子牛の育成と生産性の向上に期待。
概要
北海道大学大学院獣医学研究院の今内 覚教授、同大学大学院国際感染症学院博士課程の池端麻里氏、同大学大学院獣医学研究院の岡川朋弘招へい教員、同大学総合イノベーション創発機構ワクチン研究開発拠点の鈴木定彦特任教授らの研究グループは、プロバイオティクスの給与が子牛のワクチンに対する免疫応答を増強することを証明しました。
家畜の感染症に対する治療法には多くの抗菌剤が使用されていますが、過剰量の抗菌剤投与に伴う薬剤耐性菌の問題が世界規模で指摘されています。そのため、動物用ワクチンは抗菌剤に依存しない感染症の防御法としてますます重要視されています。しかし、既存のワクチンの単独使用では家畜の感染症を防御できない場合も多く、効果的に感染症を予防する新たな技術の開発が求められています。プロバイオティクスにはT細胞の活性化をはじめとした免疫調節機能があるため、ワクチン応答の増強効果が期待されています。プロバイオティクスによってワクチン応答を増強することができれば、感染症対策に幅広く貢献する可能性があります。しかし、子牛においては、プロバイオティクスの給与によるワクチン応答の増強効果は不明でした。
そこで本研究では、子牛を用いた大規模な実証試験を行い、プロバイオティクスを給与している子牛にワクチンを接種した場合、ワクチンに対する免疫応答が増強されるのかどうかについて検証しました。その結果、プロバイオティクスの給与によって子牛のワクチンに対するT細胞応答が増強されることが明らかになりました。
今後は、本研究成果をもとにしてプロバイオティクスを用いた子牛の感染症対策を推進することで、健康な子牛の育成や畜産業の生産性向上への貢献が期待されます。
なお、本研究成果は2025年10月31日(金)公開のVaccines誌にオンライン掲載されました。
論文名:Enhancement of vaccine-induced T-cell responses by probiotics in calves(プロバイオティクス給与による子牛のワクチンに対するT細胞応答の増強)
URL:https://doi.org/10.3390/vaccines13111120
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