2025年11月5日
ポイント
●ペプチド主鎖末端に対して選択的な非リボソームペプチド環化酵素をラリアット環構築に転用。
●選択的アシル化反応と組み合わせにより環状リポペプチドのモジュラー型合成戦略を確立。
●複数の合成産物が非結核性抗酸菌の生育を抑制。
概要
北海道大学大学院薬学研究院の脇本敏幸教授、松田研一准教授らの研究グループは、同大学大学院薬学研究院の市川 聡教授、勝山 彬講師、国立感染症研究所の星野仁彦博士、深野華子博士、平林亜希博士、鈴木仁人博士らとの共同研究により、非リボソームペプチド環化酵素を利用した環状リポペプチドの効率的な化学―酵素的合成法を開発しました。
大環状骨格と脂肪側鎖を併せもつ環状リポペプチドは重要な抗菌化合物群ですが、化学構造が複雑なため構造多様性に富むライブラリー構築は困難です。本研究では、ペプチド主鎖両末端を結合するhead-to-tail型の非リボソームペプチド環化酵素が、基質設計の工夫によりhead-to-side chain型のラリアット型環状ペプチド合成に転用可能であること示しました。さらに酵素反応と位置選択的アシル化反応を連続的に実施することで、様々な配列や環サイズの環状リポペプチドの迅速な合成・評価が可能になりました。本手法により合成した複数の新規環状リポペプチドが非結核性抗酸菌(Mycobacterium intracellulare)に対して8-16 µg/mLで増殖を50%阻害しました。天然物生合成酵素は、進化の過程で自然が生み出した洗練された物質変換の仕組みであり、これを有機合成化学にうまく組み込むアプローチは、将来の有用物質創成に大きく貢献すると期待されます。
なお、本研究成果は、2025年11月4日(火)公開のNature Chemistry誌にオンライン掲載されました。
論文名:Non-Ribosomal Peptide Cyclases-Directed Chemoenzymatic Synthesis of Lariat Lipopeptides(非リボソームペプチドによるラリアットリポペプチドの化学-酵素合成)
URL:https://doi.org/10.1038/s41557-025-01979-6
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