新着情報

ホーム > 新着情報 > プレスリリース(研究発表) > キトサンとカテコールから高強度バイオ接着剤を開発~湿潤環境での接着で医療材料への応用に期待~(地球環境科学研究院 教授 小野田晃)

キトサンとカテコールから高強度バイオ接着剤を開発~湿潤環境での接着で医療材料への応用に期待~(地球環境科学研究院 教授 小野田晃)

2025年11月6日

北海道大学
北海道立総合研究機構
苫小牧工業高等専門学校

ポイント

●キトサンとカテコール誘導体の単純な混合で、強力なバイオ接着剤を製造。
●木材や豚皮への接着強度をキトサンの化学構造の選択により調整可能。
●水中でも豚皮への接着力を保持するため湿潤環境での接着剤やコーティング材の利用に期待。

概要

北海道大学大学院地球環境科学研究院の小野田晃教授、北海道立総合研究機構の瀬野修一郎主査、苫小牧工業高等専門学校の甲野裕之教授、ラ・セレナ大学のマルティネス・ロニー准教授からなる国際共同研究チームは、多糖キチンから得られるキトサンとムラサキイガイの接着タンパク質に由来するカテコール基を持つ3,4-ジヒドロキシベンズアルデヒド(DB)を混ぜ合わせるだけで高性能なバイオ接着剤を得る新手法を開発しました。本法は添加剤を一切必要とせず、2時間の反応で高強度接着剤を調製でき、従来法と比較して資源循環型社会に適したプロセスです。キトサンとDBの複合接着剤は木板同士を最大3.12 MPa、豚皮同士を最大0.55 MPaの強度で接着し、既報の接着剤に匹敵する性能を示します。さらに、水中に浸した環境でも0.09-0.13 MPaの強度を維持することが明らかとなり、湿潤条件での利用可能性が実証されました。また、摩耗試験では木材表面の耐摩耗性を大幅に向上するため、接着剤だけでなくコーティング材にも応用できます。加えて、重量平均分子量(MW)や脱アセチル化度(DDA)の異なるキトサンを用いた比較から、木材への接着強度は分子量に依存し、豚皮への接着は脱アセチル化度に依存する傾向も見出されました。この知見は、対象物に応じて接着特性を設計する指針となり、幅広い応用展開に役立つと期待されます。本研究は、天然資源であるキトサンを起点とした高機能性材料開発に新たな道を拓く成果であり、産業利用や医療応用への展開が期待されます。簡便・持続可能・高性能という三拍子を兼ね備えた次世代接着剤として、持続可能な社会の実現に大きく貢献することが見込まれます。

なお、本研究成果は、2025106日(月)公開のACS Omega誌にオンライン掲載されました。

論文名:Facile and Additive-Free Synthesis of Chitosan-Catechol Adhesives with Enhanced Adhesive Strength: Performance Evaluation for Wood and Skin Binding(簡便かつ添加剤フリーなキトサン‐カテコール接着剤の合成と木材・皮膚への高強度接着評価)
URL:https://doi.org/10.1021/acsomega.5c06017

詳細はこちら


キトサンとカテコール誘導体の単純な混合で強力なバイオ接着剤を製造。わずか2時間撹拌するだけで、手で力一杯引っ張るくらいでは離れないほどの接着力を示した。