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多くの"仮足"を巧みに使う有殻アメーバの動き方を解明~単細胞生物とは思えない精密な運動の仕組み~(電子科学研究所 准教授 西上幸範)

2025年12月2日

北海道大学
山形大学
富山大学
法政大学

ポイント

●殻をかぶったアメーバ「ナベカムリ」が行う複数仮足を用いた移動の統計的特徴づけに成功。
●ナベカムリの運動方向は細胞が基盤に伝える応力場によって決まっていることを解明。
●仮足を利用する細胞行動の多様性理解に貢献し、細胞の持つ環境適応機構の解明に期待。

概要

北海道大学大学院電子科学研究所の西上幸範准教授、中垣俊之教授、谷口篤史博士研究員、北海道大学大学院生命科学院博士後期課程(研究当時)の松本絃汰氏らの研究グループは、山形大学理学部の野村真未助教、法政大学自然科学センター・国際文化学部の島野智之教授、リヨン第1大学のリウ ジャンーポール教授、富山大学の佐藤勝彦特命教授らとともに、殻を背負って生活するアメーバ「ナベカムリ」のアメーバ運動を力学的側面から詳細に調べました。ナベカムリは細胞体がキチン質の殻に囲まれていますが、その殻の底面に開いた一つの孔から複数の仮足を伸ばし、殻を引っ張りながら移動します。この移動様式は多くの接着性細胞が行う一般的なアメーバ運動とは異なり、これまで十分に理解されていませんでした。

研究グループは、基盤の弾性率を変えた際のナベカムリの運動変化を統計的に特徴づけることに加え、細胞が基盤に加える牽引応力場と運動方向の関係を明らかにしました。

本研究成果は、タコのように複数の仮足を用いて移動する有殻アメーバの移動機構を明らかにしたもので、細胞の見せる多様で巧みな仮足動態を明らかにすることに加え、細胞が環境に適応する仕組みの理解に役立ちます。

なお、本研究成果は、20251119日(水)にProceedings of the Japan Academy, Series B誌に早期オンライン公開されました。

論文名:Statistical and mechanical analysis of multi-pseudopodial locomotion in a testate amoeba, Arcella sp.(有殻アメーバ"ナベカムリ"の多仮足を用いた移動の統計・力学的解析)
URL:https://doi.org/10.2183/pjab.102.001

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基盤上を這うナベカムリの移動を横から見た様子:細胞体はキチン質の殻でおおわれており、腹側の一つの穴から複数の仮足(矢印・矢じり)を伸長させ、これらを巧みに用いることで移動する(スケール50 µm)。