2025年12月9日
ポイント
●環境負荷の大きい有機溶媒の使用量を最小限に抑えた有機ナトリウムの新規発生法の開発に成功。
●ボールミルという粉砕装置を活用することで、実験操作の大幅な簡便化と反応の高速化に成功。
●豊富資源であるナトリウムを活用した持続可能なグリーン有機合成プロセスの開発に期待。
概要
北海道大学総合イノベーション創発機構化学反応創成研究拠点(WPI-ICReDD)、同大学大学院工学研究院の伊藤 肇教授、久保田浩司准教授らの研究グループ及びイギリス・ニューキャッスル大学のロリー・アームストロング講師、イギリス・バーミンガム大学のエルリー・ルー准教授らの研究グループは、ボールミルという粉砕機を用いたメカノケミカル法を利用し、豊富資源として活用が期待されている有機ナトリウム試薬を、有機溶媒をほとんど用いない環境に優しい条件で効率的に合成し、有機合成に応用する新しい手法を開発しました。
有機リチウムは、有機合成において幅広く利用されており、医薬品や有機材料の合成に不可欠な試薬です。しかし、金属リチウムの資源量は限定的であり、将来的な供給不安が懸念されています。そのため、有機リチウムに代わる新たな代替試薬の開発が強く求められています。その中で、有機ナトリウム試薬は、原料となる金属ナトリウムが豊富に存在することから、有望な代替候補として注目されています。しかし、安価な金属ナトリウムから、有機ナトリウムを効率的かつ環境負荷の少ない方法で直接合成する技術は、これまで十分に確立されていませんでした。
研究グループは、ボールミルを用いることで、空気中・室温下という温和かつ簡便な条件で、有機溶媒をほとんど使用せずに有機ナトリウム試薬を調製し、有機合成に応用することに成功しました。この手法では、ボールミルによる機械的処理により塊状の金属ナトリウムが活性化され、有機ハロゲン化物と迅速に反応し、対応する有機ナトリウム試薬が得られることが明らかとなりました。
本研究成果は、2025年12月8日(月)公開のNature Synthesis誌にオンライン掲載されました。
論文名:Mechanochemical synthesis of organosodium compounds through direct sodiation of organic halides(有機ハロゲン化物の直接ナトリウム化による有機ナトリウム試薬のメカノケミカル合成)
URL:https://doi.org/10.1038/s44160-025-00949-7
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メカノケミカル法を用いることで、空気下・室温で有機溶媒をほとんど使用せずに、安価な金属ナトリウムから有機ナトリウム試薬を調製し、有機合成に利用することに成功。



















