2025年12月8日
ポイント
●グリーンランド氷床北西沿岸地域の積雪の化学的特性を
●ノースウォーター海域の海洋生物活動と海氷上のフロストフラワー由来のエアロゾルを検出。
●アイスコア掘削によるノースウォーター海域の100年規模の環境変動の復元の可能性を示唆。
概要
北海道大学低温科学研究所の黒﨑 豊特任助教、的場澄人助教、飯塚芳徳教授らの研究グループは、グリーンランド北西沿岸部の氷河・氷床上を犬橇で移動しながら積雪を採取し、この地域の積雪中の非海塩性硫酸イオン(nssSO42−)濃度とメタンスルホン酸(MSA)濃度が隣接するノースウォーター海域の過去の海氷変動と海洋生物活動を復元する指標になることを示しました。
ノースウォーター海域は、強い北風と暖流の影響を受けて海氷の生成と流出が繰り返されるポリニヤ域です。ポリニヤの形成・維持機構の変化は、その周辺の海氷変動や海洋生物活動、水・物質循環に大きく影響します。グリーンランド氷床の積雪やアイスコアは、過去の降雪や大気中に浮遊する不純物(エアロゾル)を保存しており過去の環境変動を復元するための貴重なアーカイブです。本研究では、ノースウォーター海域の環境変動と周辺積雪の化学的特性の関係を明らかにすることを目的に、グリーンランド氷床北西沿岸地域において広域積雪観測を行いました。
観測地域の深さ4.20 mの積雪は4年間の環境情報を保存しており、春から夏の海洋植物プランクトンの増殖を起源とするMSA濃度と、秋から冬の薄氷上に形成されるフロストフラワー起源のnssSO42−濃度のピークが検出されました。これらのエアロゾルの輸送経路を推定した結果、これらのエアロゾルの放出源はノースウォーター海域であったことが示唆されました。
本研究では、グリーンランド氷床北西沿岸地域の積雪が、ノースウォーター海域における海氷変動と海洋生物活動を理解するためのアーカイブであることを示しました。今後、この地域でアイスコアを掘削し、過去100年間のノースウォーター海域の環境変動とそれが周辺環境に与えた影響を復元することを目指します。
なお、本研究成果は、2025年11月25日(火)公開のThe Cryosphere誌にオンライン掲載されました。
論文名:Characteristics of snowpack chemistry on the coastal region in the northwestern Greenland Ice Sheet facing the North Water(ノースウォーター海域に隣接するグリーンランド氷床北西沿岸地域の積雪の化学的特性)
URL:https://doi.org/10.5194/tc-19-6171-2025
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春~夏(左)と秋~冬(右)におけるノースウォーター海域を起源とするエアロゾルの輸送イメージと、グリーンランド氷床北西沿岸部の積雪中のMSA濃度とnssSO42−濃度の鉛直分布。MSAは植物プランクトンを起源とする硫化ジメチル(DMS)の酸化により生成される。



















