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ゆっくり動く水生動物の行動を"見える化"~マナマコの移動を捉える新解析手法を確立~(水産科学研究院 教授 高木 力)

2025年12月15日

ポイント

●目視でしか調べられなかったナマコ類の移動を、長期間・高精度に計測する新技術を開発。
●季節に応じて移動が活発なモードと抑制されたモードを切り替えていることを定量的に解明。
●ゆっくり動く底生動物の行動を「数値化」できる新たな評価技術として応用に期待。

概要

北海道大学大学院水産科学研究院の高木 力教授、同大学大学院環境科学院博士後期課程の田中優斗氏、同大学大学院水産科学院修士課程の篠野惠利香氏(研究当時)及び神田紘暉氏(研究当時)、道立総合研究機構函館水産試験場の酒井勇一主任主査らの研究グループは、音響テレメトリーとデータ同化手法を組み合わせ、これまで目視に頼っていたマナマコの移動を長期間かつ高精度で追跡する手法を確立しました。特に放流後の移動分散行動については、これまでほとんど明らかにされてこなかった分野であり、今後の応用が期待されます。さらに、フラクタル次元解析を用いることで、10月(夏眠期)と2月(成長期)における行動の「複雑性」や「活性度」を客観的に数値化し、マナマコが季節に応じて移動が活発なモードと抑制されたモードに切り替えることを定量的に明らかにしました。

本研究は、行動が遅く、従来の追跡方法では計測が難しかった底生動物に対し、高精度の行動推定を実現する新たな解析技術の基盤を示すものです。この技術は、ナマコ類をはじめとする水圏の底生生物の行動評価、放流効果の検証、資源管理などへの応用が期待され、今後の沿岸生態系研究や水産振興に大きく貢献する可能性があります。

なお、本研究成果は、20251212日(金)公開のScientific Reports誌にオンライン掲載されました。

論文名:Data Assimilation Reveals Behavioral Dynamics of Sea Cucumbers as a Model for Slow-Moving Benthic Animals(データ同化は、ゆっくり動く底生動物のモデルとしてのマナマコの行動動態を明らかにする)
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-025-29171-3

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成長期と夏眠期のマナマコの移動軌跡。季節によってマナマコの動きの違いが明らかに。データ同化手法の適用により個体の動きが明瞭に表されている。グレーの点(・)は音響計測のみで推定した位置。成長期では転石近くで留まりやすいことが分かった。