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太平洋側北極海の「亜寒帯化」は夏に進行することを解明~プランクトンの12年間の長期観測データを日韓共同で解析~(北方生物圏フィールド科学センター 准教授 松野孝平)

2026年1月6日

ポイント

●夏季の太平洋側北極海における動物プランクトン群集の時空間変化を日韓共同で調査。
●12年間のデータから、太平洋群集は8月に勢力を伸ばすが、9月には急速に減少することが判明。
●気候変動による太平洋側北極海の海洋生態系への影響の理解に大きく貢献。

概要

北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの松野孝平准教授、同大学大学院水産科学研究院の山口 篤准教授、韓国極地研究所のジ―フーン キム博士らの研究グループは、2008-2021年の12年間にわたる太平洋側北極海における動物プランクトン群集と海洋環境データを日韓共同で解析し、太平洋群集が8月には増加するが、9月になると急速に減少することを明らかにしました。

動物プランクトンは、海洋生態系における重要な仲介者であり、植物プランクトンの一次生産に起因する有機物を、高次生物へ受け渡します。また動物プランクトンは、寿命が短く、⽔中を漂うため、海氷衰退のような気候変動の影響を受けやすいと考えられています。太平洋側北極海では近年、温暖な太平洋水の流入量が増加し、「亜寒帯化」が進行していることが示唆されています。しかし、当該海域における動物プランクトン群集の経時変化に関する知見は乏しく、大型でエネルギーを多くもつ太平洋産種を多く含む太平洋群集が、いつどのように増減するかに関する知見は乏しいのが現状でした。そこで研究グループは、海洋研究開発機構(JAMSTEC)海洋地球研究船みらいと、韓国極地研究所の砕氷船アラオンにより12年間にわたり取得蓄積されたデータを統合解析しました。その結果、亜寒帯性種が含まれる太平洋群集は8月には増加しますが、9月になると急速に減少することを明らかにしました。

本研究の成果は、太平洋側北極海における亜寒帯化が夏に進行することを明らかにしており、今後の地球温暖化に対する北極海の海洋⽣態系の将来予測に貢献する知⾒となります。

なお本研究成果は、2025126⽇(土)公開のProgress in Oceanography誌にオンライン掲載されました。

論文名:Synthesis of spatiotemporal variability in western Arctic zooplankton communities from summer to fall during 2008-2021(2008-2021年の夏から秋にかけての西部北極海における動物プランクトン群集の時空間変動の総合解析)
URL:https://doi.org/10.1016/j.pocean.2025.103634

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太平洋側北極海における亜寒帯化した動物プランクトン群集の季節変化の模式図。太平洋産種が多く、亜寒帯化が進行した群集F(オレンジ色)は、7-8月に見られるが、9月には範囲が減少し、従来の北極海群集D(青色)が増加。