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選ばれた接続を強く育てる脳の仕組みを解明~小脳神経回路形成におけるmGluR1シグナルの意外な二役~(医学研究院 山崎美和子 准教授)

2026年1月29日

北海道大学
帝京大学
東京大学
広島大学

ポイント

●「勝者」のシナプスを強く育てる司令塔(シグナル)を解明。
●「敗者」を除去する分子(mGluR1)が、実は「勝者」の強化にも不可欠であることを発見。
●一つのシグナルが「除去」と「強化」を使い分ける、脳の効率的な形成原理を提唱。

概要

北海道大学大学院医学研究院の山崎美和子准教授、帝京大学先端総合研究機構の狩野方伸特任教授(東京大学大学院医学系研究科 名誉教授)らを中心とする、北海道大学、帝京大学、東京大学、広島大学の研究グループは、運動学習や認知機能・社会性を担う小脳の神経回路形成過程において、重要な神経接続を強化する仕組みを明らかにしました。

生まれた直後のマウスのプルキンエ細胞は、5本以上の登上線維とシナプスを形成していますが、その後の1週間で1本の線維が選ばれて「勝者」となり、これ以外の線維(敗者)は最終的に除去されます。これまでの研究では、この「勝者」が強化され、樹状突起の広い範囲へ支配を拡大する仕組みについてよく分かっていませんでした。

本研究では、マウスを用いた実験により、プルキンエ細胞に豊富に発現する1型代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)―プロテインキナーゼCγ(PKCγ)に至る伝達経路が、「勝者」のシナプス機能と構造を強化し、樹状突起へと配線を広げるために必須であることを解明しました。これまでに、このシグナル伝達経路は、不要な神経結合(敗者)を除去するために必須であることが分かっていましたが、本研究により、必要な結合を強く育て上げ、勝者と敗者の格差を増強する役割も併せ持つことが初めて明らかになりました。

なお、本研究成果は 2026 123日(金)公開のProceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America誌にオンライン掲載されました。

論文名:mGluR1 signaling is necessary for strengthening winner climbing fiber inputs in the developing mouse cerebellum(mGluR1シグナル伝達経路は「勝者」登上線維シナプスの強化に必須である)
URL:https://doi.org/10.1073/pnas.2425460123

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本研究で解明されたmGluR1シグナルの役割。本研究により、mGluR1-PKCγ経路は、選ばれた「勝者」線維のシナプス構造・機能の強化と、それに続く樹状突起への支配領域の拡大に必須であることが明らかになった。これまでに知られていた「敗者」の除去(シナプス刈り込み)に加え、選ばれた接続を強く育てるという「育成」の役割も併せ持つ。