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"食べられる触媒"を利用した生分解性高分子の精密合成~安全かつ実用的な高分子合成法の確立に期待~(工学研究院 教授 佐藤敏文、助教 李 灃)

2026年2月17日

ポイント

●食品添加物を触媒として用いた生分解性ポリエステルの精密合成法の確立に成功。
●本手法により、多様な構造を有する高付加価値な生分解性高分子材料の合成が可能に。
●実用性と安全性を両立した高分子合成法として、社会実装が期待。

概要

北海道大学大学院工学研究院の佐藤敏文教授、磯野拓也准教授及び李 灃助教らの研究グループは、食品添加物として利用されている安全性の高い化合物を触媒として用い、ポリ乳酸やポリ-εイプシロン-カプロラクトンなどの生分解性を有する脂肪族ポリエステル(APE)の精密合成法を確立しました。

APEは、生分解性・生体適合性・生体吸収性に優れていることから、環境に優しいプラスチック材料として、また吸収性縫合糸やインプラントなどの医用高分子材料としての応用が進められています。現在、APEの工業的合成には、スズなどの重金属を含む触媒を用いた重合反応が一般的に採用されていますが、製品中に残存する金属成分が自然環境や生体に悪影響を及ぼす可能性が指摘されています。このため、重金属などの有害成分を含まない、安全な有機触媒を用いた合成法の開発が強く求められていました。

本研究では、安全性の高い有機触媒として、クエン酸/クエン酸ナトリウム/クエン酸カリウム、並びにサッカリン/サッカリンナトリウムといった、食品添加物として広く利用されている有機酸及びそのアルカリ金属塩に着目しました。無溶媒条件下において、これらを触媒として用いることで、高分子の構造及び分子量を精密に制御した高分子合成に成功しました。また、有機酸とアルカリ金属塩の選択により、多様なモノマーの重合が可能であることを示しました。さらに、異なる触媒を組み合わせて、更に高付加価値なランダム共重合体やブロック共重合体などの合成にも応用できることを明らかにしました。

本研究成果は、安全性と機能性を両立した新たな生分解性高分子の合成技術として、材料科学及び環境分野への幅広い応用が期待されます。

なお、本研究成果は、202622日(月)公開のGreen Chemistry誌に掲載されました。

論文名:Well-Controlled Synthesis of Biodegradable Polyesters using Edible Catalysts(食べられる触媒を用いた生分解性ポリエステルの精密合成)
URL:https://doi.org/10.1039/D5GC05933J

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本研究の概要図