新着情報

ホーム > 新着情報 > プレスリリース(研究発表) > 光渦でキラリティを見分ける仕組みを世界で初めて解明~光がゼロの"渦の中心"で現れる左右差の起源を突き止める~(電子科学研究所 教授 田中嘉人、助教 橋谷田俊)

光渦でキラリティを見分ける仕組みを世界で初めて解明~光がゼロの"渦の中心"で現れる左右差の起源を突き止める~(電子科学研究所 教授 田中嘉人、助教 橋谷田俊)

2026年2月20日

ポイント

●光渦の中心付近で現れる左右差の物理的な起源を世界で初めて解明。
●独自の光渦高速切り替え技術と理論で、左右差が物質のキラリティ由来であることを実証。
●分子集合体など大きな高次構造のねじれを光で選択的に読み出す新手法へ展開。

概要

北海道大学電子科学研究所の橋谷田俊助教、田中嘉人教授らの研究グループは、渦を巻きながら進むねじれた光「光渦」を用いて、物質のキラリティ(左右の違い)を見分ける仕組みを、世界で初めて明らかにしました。

キラリティとは、左手と右手のように、鏡に映した像と重ね合わせることができない性質のことです。この性質は自然界の様々な場面に現れ、分子からナノサイズの構造の中にも存在します。特にタンパク質では、その立体的なねじれの形が生命の働きを左右する重要な役割を担っています。

近年、光渦を用いると物質のキラリティを検出できる可能性が注目されてきました。キラリティを持つ物質に左巻きと右巻きの光渦を当てると、通り抜けた光の量にわずかな違いが生じることが報告されていました。しかし、その違いがなぜ生じるのか、また本当に物質のキラリティを反映しているのかは、はっきりしていませんでした。

本研究では、独自に開発した光渦の高速切り替え技術を用い、光渦とキラリティを持つナノ構造の位置関係を精密に変えながら、通り抜けた光の左右差を高い精度で測定しました。その結果、光の強度がゼロになる光渦の中心付近で、特徴的な左右差が最もはっきり現れることを見いだしました。光が弱い場所では応答も弱いはずだという直感に反する結果でした。

さらに、研究グループが構築した理論に基づく解析を行ったところ、この左右差がナノ構造内部に広がるねじれと光渦のねじれが結びつくことで生じていることが分かりました。

これにより、光渦で観測される左右差の物理的な起源が初めて明確になりました。本研究成果は、分子が集まってできたより大きな高次構造のねじれを光で選択的に読み取る新しい手法につながるものであり、生命機能に関わる構造を触れずに調べる技術への発展が期待されます。

なお、本研究成果は、2026217日(火)公開のOptica誌にオンライン掲載されました。

論文名:Unveiling orbital optical chirality through multipolar chiral light-matter interaction(多重極子のキラリティとの相互作用により顕在化した光の軌道角運動量に基づくキラリティ)
URL:https://doi.org/10.1364/OPTICA.584008

詳細はこちら


光渦が持つ空間的なねじれと物質の立体的なねじれが結びつくことで、暗い中心付近にキラリティ由来の左右差が現れる原理を示した概念図。