2026年3月23日
ポイント
●LC/MSにより健常者・MCI患者の血漿・唾液・糞便で非標的脂質プロファイリングを実施。
●TG-MCFAsをMCIバイオマーカーとして発見、FA 18:3・FA 22:5・CE 18:2が主要識別脂質。
●将来の診断方法やMCIから認知症への進行予測への応用に期待。
概要
北海道大学大学院保健科学研究院のボメ ゴウダ シッダバサーブ ゴウダ准教授及び惠 淑萍教授らの研究グループは、南フロリダ大学マイクロバイオーム研究センター、マイクロバイオーム研究所のハリオム・ヤダヴ所長らと共同で、唾液、血漿、糞便サンプルの非標的脂質プロファイリングを実施し、MCIに関連する有望な脂質バイオマーカーを同定することに成功しました。
アルツハイマー病(AD)は世界中で認知症の主な原因であり、高齢化に伴いその有病率は急速に増加しています。軽度認知障害(MCI)は正常な老化と認知症の間の早期の過渡期であり、介入の重要な機会となりますが、現在のAD診断法は主に侵襲的手法に依存しており、疾患感度及びMCIの早期発見は不十分です。脂質は脳の構造や機能に必須であり、脂質代謝の異常は神経変性において重要な役割を果たすことが示唆されています。近年、液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)を用いたリピドミクスが注目されており、唾液や糞便などの非侵襲的サンプルから脂質バイオマーカーを取得する研究が進められています。しかし、MCIの早期発見を目的とした複数の体液における統合的リピドミクス分析は依然として限られています。
本研究では、65~85歳の高齢者の唾液、血漿、糞便サンプルを対象に、高性能液体クロマトグラフィーと高分解能質量分析法を組み合わせ、MCIに関連する明確な脂質組成シグネチャーを同定しました。さらに、五つの主要脂質クラスにわたり200種類以上の脂質分子種をアノテーションしました。受信者動作特性(ROC)解析により、α-リノレン酸(FA18:3)、ドコサペンタエン酸(FA22:5)、コレステリルリノレート(CE18:2)が主要識別バイオマーカーとして強調されました。加えて、糞便中の中鎖脂肪酸含有トリアシルグリセロール(TG-MCFAs)は、MCIにおける脂質代謝または吸収障害の非侵襲的指標として提案されました。
なお、本研究成果は、2026年2月16日 (月) 公開のTranslational Psychiatry誌にオンライン公開されました。
論文名:Lipidomic signatures reveal biomarkers of mild cognitive impairment(脂質オミクスシグネチャーによる軽度認知障害関連バイオマーカーの同定)
URL:https://doi.org/10.1038/s41398-026-03893-y
詳細はこちら



















