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ポリエーテル系天然物の精巧な生合成経路を一般化~単独では立体構造を形成できない、極端に柔軟な酵素が存在する~(先端生命科学研究院 教授 尾瀬農之、名誉教授 及川英秋)

2026年4月17日

北海道大学
東京科学大学

ポイント

●長年不明であった連続的ポリエーテル環化酵素反応を解明。
●自然界で広く保存された戦略。
●超柔軟な酵素が、ペアが存在するときに構造が形成される過程を直接的に観察。

概要

北海道大学大学院先端生命科学研究院の尾瀬農之教授、薮野奈々研究補佐員、久米田博之学術専門職、同大学の及川英秋名誉教授、同大学大学院理学研究院の尾崎太郎助教(研究当時、現・東北大学准教授)、東京科学大学理学院化学系の南 篤志教授らの研究グループは、自然界に存在する天然化合物の主要な一群であるポリエーテル系天然物が作られる際の連続的環化反応を、特殊な工夫をして明らかにしました。ポリエーテルの代表的化合物モネンシンは抗生物質として利用されていますが、キーとなる生合成の過程で4回の連続的酵素環化反応が起こります。この反応はファスナーが閉じるように、端から順番に起こることが予測されていましたが、どういう蛋白質が具体的にどのように働くかは、分かっていませんでした。直前の基質は細長い化合物であり、酵素が収容するには大きなポケットが必要になります。近年流行しているAI(プログラムAlphaFold3など)による構造・反応予測はできません。研究グループは、放線菌の遺伝子破壊、モデル基質合成、結晶解析及び核磁気共鳴法を組み合わせた構造評価、質量分析や種々の分析装置、分子動力学計算など、様々な角度から切り込むことにより、一つの蛋白質(MonBII)が4回の連続的酵素環化反応を触媒することを突き止めました。慎重にMonBIIを作製すると、溶液内では立体構造を取らない状態であることが分かりました。ここに相方であるMonBI蛋白質を添加すると、MonBIを鋳型として、MonBIIの構造形成が起こります。細胞の中でおこなわれている蛋白質の構造形成を、水溶液の中で再現できる例は極めて珍しいです。MonBIIは単独では構造非形成蛋白質ですが、構造非形成蛋白質が酵素として働く例もこれまでありませんでした。構造非形成蛋白質が必要な理由と合わせ、このタイプの蛋白質が広く存在することが明らかになり、化合物の合成や蛋白質の能力開発に対し、新たな展開の起点とすることができます。

なお、本研究成果は、日本時間2026416日(木)公開のNature Chemistry誌にオンライン掲載されました。

論文名:A system of paired polyether epoxide hydrolases enables a mouldable enzyme for consecutive ring cyclisation cascades(相方として鋳型をもちいた構造形成戦略により、ポリエーテル生合成連続環化反応が可能となる)
URL:https://doi.org/10.1038/s41557-026-02122-9

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MonBIIは単独では構造を形成していないが、MonBIが存在すると、構造を形成する(証明は、HSQCという核磁気共鳴法の手法)。この構造形成が、モネンシンを作るための4回連続環化反応に必要であることが分かった。