2026年4月24日
北海道大学
国立環境研究所
ポイント
●複数年の航空レーザ測量とAI技術により、台風かく乱後18年間の森林バイオマス回復の定量化に成功。
●かく乱後に約10年遅れて成長が加速する「遅延加速型回復」を解明。
●天然広葉樹林の炭素吸収ポテンシャル評価と炭素クレジット制度高度化の進展に期待。
概要
北海道大学大学院農学研究院の加藤知道教授と同大学北方生物圏フィールド科学センター中路達郎教授、東京大学大学院農学生命科学研究科、国立環境研究所生物多様性領域の林 真智特別研究員らの研究グループは、北海道大学北方生物圏フィールド科学センター苫小牧研究林の天然広葉樹が優占する森林約2,516 haを対象に、2004年の台風かく乱後の森林バイオマス回復を、多時期の航空機レーザ測量及びUAV(無人航空機)レーザ測量と現地調査を統合して18年間(2004-2022年)追跡し、その時空間動態を高解像度(2m)で定量化しました。
その結果、対象地全域の18年間の平均森林地上部バイオマス成長速度は1.30 Mg ha⁻¹ yr⁻¹(CO₂換算値:2.24 tCO₂ ha⁻¹ yr⁻¹)で、台風後に樹木のほとんどが倒れたかく乱域(対象地全域の3.7%)は1.64 Mg ha⁻¹ yr⁻¹(2.83 tCO₂ ha⁻¹ yr⁻¹)で、非かく乱域(対象地全域の96.3%)の1.29 Mg ha⁻¹ yr⁻¹(2.23 tCO₂ ha⁻¹ yr⁻¹)を上回りました。特にかく乱域では、2004-2014年の0.97 Mg ha⁻¹ yr⁻¹(1.67 tCO₂ ha⁻¹ yr⁻¹)から2014-2022年には2.48 Mg ha⁻¹ yr⁻¹(4.28 tCO₂ ha⁻¹ yr⁻¹)へと成長が加速し、約10年の遅れの後に回復が顕著化する「遅延加速型回復」が確認されました。
本研究対象は天然広葉樹林であり、現行の炭素クレジット(J-クレジット制度)が主に対象とする人工林に対し、天然林の炭素吸収ポテンシャルを示す結果となりました。ただし、天然林を対象とした制度設計は発展途上であり、今後のルール整備が重要です。本研究は、森林炭素の非線形回復の理解と炭素クレジットの高度化に資する知見を提供します。
なお、本研究成果は、2026年3月12日(木)公開のForest Ecology and Management誌にオンライン掲載されました。
論文名:Characterizing typhoon-disturbed biomass dynamics using multitemporal LiDAR, high-resolution imagery, and deep learning in cool-temperate forest, northern Japan(北日本の冷温帯林における複数時期のLidarと高解像度画像及び深層学習を用いた台風かく乱によるバイオマス変化の解明)
URL:https://doi.org/10.1016/j.foreco.2026.123692
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平均森林地上部成長速度(AGR:Average Growth Rate、1ピクセルあたり2m x 2m、単位Mgバイオマスha-1yr-1)。(a)2004-2022、(b)2004-2014、(c)2014-2022、(d) cとbの差分。(d)の赤領域は1期目(2004-2014)より2期目(2014-2022)の方が、成長速度が大きい「遅延加速型回復」を示す。



















