2026年4月28日
北海道大学
足寄動物化石博物館
ポイント
●北海道産カイギュウ類化石の骨に保存されているステロイドなどの脂質の抽出に成功。
●化石中のステロイドの安定炭素同位体比から、アマモ食かケルプ食かを判別。
●約1千万年前の中新世に生きた海生哺乳類の骨化石中の脂質を用いた食性復元は世界初。
概要
足寄動物化石博物館学芸員(北海道大学総合博物館の資料部研究員兼任)の新村龍也氏と北海道大学大学院理学研究院の沢田 健教授の研究グループは、博物館に収蔵された海生哺乳類の骨化石を有機地球化学的手法で分析しました。
この研究では、北海道の中新世の地層(~約1千万年前)から産出したカイギュウ類の骨化石の中に保存された脂質を分析し、その安定炭素同位体比から食性を推定しました。約1千万年前という古いカイギュウ類の骨化石において、その中に保存された脂質の一種(C27ステロイド)が、その動物自身に由来することを示し、さらにその脂質の同位体比から食性(アマモ食orケルプ食)を推定した例は、世界で初めてとなります。
一般に、化石動物の食性は歯や口の形態から推測されます。しかし、形態だけでは実際に食べていたものを正確に特定できない場合があります。そのため、近年では歯のエナメル質や骨中タンパク質の安定同位体比を用いて食性を推定する研究が行われています。しかしながら、これらの手法にも課題があります。歯のエナメル質は化石化の過程で周囲の環境の影響を受けて変化している(続成変化)可能性があり、また古い骨化石に残るタンパク質が本当にその動物に由来するものかどうかについても、いまだ十分には解明されていません。
そこで本研究では、比較的保存されやすい脂質に着目しました。その結果、骨化石中からその動物に由来したと考えられる脂質(C27ステロイド)が検出されました。さらに、その安定炭素同位体比の値を解析したところ、分析したカイギュウ類は、アマモ類を主に食べていた種類と、ケルプ類を主に食べていた種類に分けられることが明らかになりました。
本研究で示された手法は、より古い時代の化石や、他の脊椎動物化石にも応用できる可能性があります。
なお、本研究成果は、2026年4月18日(土)公開のPalaeogeography, Palaeoclimatology, Palaeoecology誌にオンライン掲載されました。
論文名:Paleodietary analysis based on stable carbon isotope ratios of lipids preserved in sirenian fossil bones from Hokkaido, Japan(北海道から産出したカイギュウ類化石の中に保存された脂質の炭素同位体比を用いた食性解析)
URL:https://doi.org/10.1016/j.palaeo.2026.113809
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