2026年5月28日
ポイント
●マリン・ビブリオを生物触媒としエネルギー生産やプラスチック分解に寄与するGXツールを総括。
●最速の増殖速度記録を持つビブリオ・ナトリーゲンスのエタノール生成触媒への改変に成功。
●ビブリオ・リゾスファエレから新規なPBSA分解酵素遺伝子を発見。
概要
北海道大学大学院水産科学院修士課程2年の田仲真実氏(研究当時)、吉藤千織氏(研究当時)、同大学大学院水産科学研究院の美野さやか助教、澤辺智雄教授、ブラジル・リオデジャネイロ連邦大学のトンプソン教授らの研究グループは、マリン・ビブリオを生物触媒とし、エネルギー生産やプラスチック分解を介してGXに寄与する一連の研究成果を総括した総説を公表しました。
2030年までに持続可能な世界を目指すSDGsが国際目標となり、関連の研究開発が進展しています。また、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、カーボンニュートラルという目標が掲げられる中、エネルギー供給源の多様化を目的とした様々な研究開発が活発に続けられています。ここ四半世紀の間には、マリン・バイオリソースを活用するバイオ燃料生産技術に関する取り組みや海洋プラスチック汚染対策の一環としてプラスチック・リサイクルに関する技術も進展してきました。澤辺教授らのグループも、海洋細菌を生物触媒とし、マリン・バイオリソースを原料としたエネルギー生産やプラスチック分解に関する基盤研究を進めてきました。
本総説では、マリン・ビブリオの中でも、マリン・バイオリソースを原料としてエタノールを生成可能になった改変株の創製、水素生成の高い種やグループの発見の経緯をまとめるとともに、新たな知見として、細菌の中で最も速い増殖速度が記録されているビブリオ・ナトリーゲンスをエタノール生成株へと改変した結果を紹介しています。また、プラスチック分解性を有するマリン・ビブリオの発見とそれら由来の酵素遺伝子を同定した研究例をまとめるとともに、ビブリオ・リゾスファエレから新規のプラスチック分解酵素遺伝子が見いだされたことも紹介しています。マリン・ビブリオは、古くから物質循環のキープレーヤとして役割を果たしてきたことから、予想しなかった多様な機能や特有の分子マシナリ―を保持していることが分かり、これがSDGsやカーボンニュートラルの目標達成に向け活用されることが期待されます。
なお、本研究成果は、2026年5月26日(火)公開のCurrent Microbiology誌にオンライン公開されました。
論文名:Marine vibrio biocatalysts as unique Green Transformation (GX) tools at the time to Sustainable Development Goals (SDGs)(マリン・ビブリオを生物触媒として活用するSDGs時代のGXツール)
URL:https://doi.org/10.1007/s00284-026-04958-3
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