2026年5月8日
ポイント
●2025年の所得は危機前を上回る水準まで回復したが、経営間の格差は拡大。
●分析全期を通じ、頭数の増加に伴い100キロ当たり所得が低下する傾向が農家間で観察された。
●規模拡大に伴い収益性の低下がみられる構造は、北海道酪農の基本戦略の再検討を迫るもの。
概要
北海道大学大学院農学研究院の小林国之准教授らの研究グループは、畑地型酪農地帯の農協データ(約100戸、2020〜2025年)を用い、酪農危機が経営所得・収益性に与えた影響と、その後の回復局面における経営間格差の実態を追跡分析しました。農家固定効果モデル・混合モデル等を組み合わせ、期別(基準期・危機期・回復一期・回復二期)の構造変化を定量的に解明しました。
主な研究成果は以下のとおりです。
① 所得の大幅回復と格差の同時拡大 ... 2025年(回復二期)には農家固定効果で基準期比+約330万円の農業所得回復が確認されました。一方、収益性指標(出荷乳量100キロ当たり所得)の分布は統計的に有意なばらつきの拡大を示しており、回復は経営間の格差が拡大する形で進みました。
② 規模拡大と収益性低下の構造的関係 ... 複数のモデルを通じ、経産牛頭数の増加(1頭当たり)に対して100キロ当たり所得が約10〜16円低下する傾向が農家間比較で一貫して観察されました(例:10頭差で▲約150円)。固定効果モデルでは同一農家内の増頭は収益性を下げないことも確認されており、この傾向は農家間の経営構造差に起因します。
③ 規模拡大による「経営基盤強化」見直しへの示唆 ... 分析全体を通じ、規模の大きな経営ほど収益性(100キロあたり所得)が低い傾向が確認されました。これは、規模拡大による経営基盤強化を基本方向としてきた北海道酪農の戦略について再検討を迫るものであり、次の外部ショックに対する構造的脆弱性として政策的対応が求められます。
なお、本研究成果は、2026年3月14日(土)に開催された北海道農業経済学会第143回例会(於・北海道大学農学部)において口頭報告を行ったものです。
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