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マダニの唾液はマクロファージ依存性に宿主免疫を抑制する~制御性T細胞の誘導を介したマダニの免疫回避機構の解明に期待~(獣医学研究院 教授 今内 覚)

2026年5月1日

北海道大学
長崎大学

ポイント

●マダニ唾液によるT細胞の免疫抑制がマクロファージ依存的に生じることを発見。
●マダニ唾液がマクロファージを免疫抑制的な表現型に変化させることを証明。
●マダニによる宿主免疫回避機構の解明とダニ媒介感染症制御への応用可能性を示唆。

概要

北海道大学大学院獣医学研究院の今内 覚教授、同大学大学院国際感染症学院博士課程の中村隼人氏、長崎大学高度感染症研究センターの好井健太朗教授、リオグランデドスール連邦大学のイタバジャラ ダ シルバ バズ ジュニア教授(ブラジル連邦共和国)らの研究グループは、マダニの一種であるオウシマダニ(Rhipicephalus microplus)の唾液が免疫細胞であるマクロファージの性質を変化させることで、T細胞の働きを抑制する仕組みを明らかにしました。

オウシマダニは、主にウシに寄生する一宿主性のマダニであり、亜熱帯及び熱帯地域を中心として世界的に分布しています。吸血による被害に加え、様々な病原体を伝播することから、畜産生産に深刻な被害を与える重要な外部寄生虫として知られています。マダニは吸血の際に唾液中の様々な分子を宿主に注入し、宿主の免疫応答を抑えることで長時間の吸血を可能にしています。このようなマダニ唾液による免疫抑制は以前から知られていましたが、どの免疫細胞がその抑制作用の中心的な役割を担っているのかは十分に解明されていませんでした。

そこで本研究では、マダニ唾液が宿主の免疫系に及ぼす影響を詳細に解析しました。その結果、マダニ唾液はマクロファージの性質を大きく変化させ、炎症性サイトカインの産生や抗原提示機能を低下させる一方で、免疫抑制性サイトカインの発現を誘導することが明らかになりました。さらに、このような免疫抑制型マクロファージは周囲の免疫環境を調節し、T細胞による炎症性サイトカインの産生を抑制するとともに、制御性T細胞における免疫抑制性サイトカインの発現を増加させることが示されました。加えて、マクロファージ系細胞を除去するとこれらの免疫抑制効果が消失したことから、マダニ唾液による免疫抑制はマクロファージを中心とした細胞機構によって引き起こされることが明らかとなりました。本研究成果は、マダニが宿主免疫を回避する新たな仕組みを明らかにするものであり、マダニ媒介感染症の制御や新たな免疫制御戦略の開発につながることが期待されます。

なお、本研究成果は、2026430日(木)に国際学術誌Communications Biologyにオンライン掲載されました。

論文名:Tick saliva reprograms macrophages into immunosuppressive hubs that regulate T-cell immunity in Rhipicephalus microplus infestation(オウシマダニ唾液がマクロファージを免疫抑制の中枢へと再プログラムしてT細胞免疫を制御する)
URL:https://doi.org/10.1038/s42003-026-09981-5

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