新着情報

ホーム > 新着情報 > プレスリリース(研究発表) > ジャポニカ米56品種で新規ヒドロキシ脂肪酸エステル同定~色素米品種に含まれる生理活性脂質の解明~(保健科学研究院 准教授 ボメ ゴウダ シッダバサーブ ゴウダ)

ジャポニカ米56品種で新規ヒドロキシ脂肪酸エステル同定~色素米品種に含まれる生理活性脂質の解明~(保健科学研究院 准教授 ボメ ゴウダ シッダバサーブ ゴウダ)

2026年6月3日

ポイント

●米品種で初めて新規脂肪酸エステルFAHMFA・LNAPEを含む196脂質分子を同定。
●黒米・緑米は脂質指標に良好な傾向を示し、心血管及び代謝機能疾患予防への寄与を示唆。
●デンプンの分解が遅いため血糖への影響が穏やかであり機能性米製品への応用に期待。

概要

北海道大学大学院保健科学研究院のボメ ゴウダ シッダバサーブ ゴウダ准教授及び惠 淑萍教授らの研究グループは、全国56品種の着色ジャポニカ米(玄米・赤米・緑米・黒米)を対象に非標的リピドミクス解析を実施し、米品種初の新規生理活性脂質FAHMFA及びLNAPEを含む包括的脂質マップを作成することに成功しました。

研究グループは先進的な分析技術を用いて、食品由来の新規生理活性脂質とその健康機能を体系的に探求してきました。過去数年間にわたり、日本の食魚、ハーブティー、海藻などから未報告の脂質分子を同定し、日本における脂質豊富な未開拓食品資源の解明に大きく貢献しました。こうした研究基盤を活かし、本研究では「脂質探索」の対象を着色ジャポニカ米に拡大しました。研究グループは全国から56品種を収集し、精米処理後に改良型ブライ・ダイヤー法で脂質を抽出しました。得られた脂質抽出物は、非標的リピドミクス解析(LC-Orbitrap-MS)により網羅的にプロファイリングされ、化学誘導体化や合成標準品との比較を含む厳密な手法で新規脂質の構造を確定しました。これにより、ジャポニカ米56品種における世界初の包括的な脂質マップを作成し、ヒドロキシ中鎖脂肪酸エステル(FAHMFA)及びN-アシル-リゾホスファチジルエタノールアミン(LNAPE)などの新規生理活性脂質クラスを同定しました。

最も注目すべき発見は、米種においてこれまで報告されていなかったFAHMFAの存在です。また、栽培方法の違いによる脂質組成の明確な差異、及び色素含有品種ごとの独自の「脂質指紋」が明らかになりました。特に黒米と緑米は、多価不飽和脂肪酸と飽和脂肪酸の理想的な比率、アテローム発生スコア及び低コレステロール血症スコアの優位性、デンプン分解速度の遅延による推定グリセミック指数(GI)の低下を示し、一般的な高GI白米と比較して食後血糖値の急激な上昇を緩和する可能性が示唆されます。肥満、糖尿病、心血管疾患の増加に直面する現代社会において、文化的親和性が高く、脂質品質に優れ、血糖への影響が良好な主食候補として、これらの着色米品種は心血管健康維持、血糖コントロール、2型糖尿病予防に寄与する機能性食品としての応用が期待されます。

なお、本研究成果は、20251113日(木)公開のFood Research International誌にオンライン掲載されました。

論文名:Lipidomic profiling of 56 japonica rice cultivars and identification of novel fatty acid esters of hydroxy fatty acids(56品種のジャポニカ米における脂質プロファイリング及びヒドロキシ脂肪酸由来の新規脂肪酸エステルの同定)
URL:https://doi.org/10.1016/j.foodres.2025.117895

詳細はこちら


研究の概要図