2026年6月12日
ポイント
●植物の遺伝的多様性を維持する進化的要因を解明。
●混ぜて植えると収量が増える遺伝子座を特定することに成功。
●作物の競争緩和と収量増加に期待。
概要
北海道大学大学院地球環境科学研究院の佐藤安弘助教は、モデル植物シロイヌナズナの野生系統において、遺伝的多様性を維持する進化的要因と収量を増加させる遺伝子座を明らかにしました。
自然界の生物集団には遺伝的に異なる個体が混在していますが、遺伝的多様性が何世代も維持されるためには少数派の遺伝子型が有利になるような特殊な自然選択が必要と言われています。本研究では、遺伝病の解析に使われる統計手法を個体間の関係に広げて、シロイヌナズナの競争関係を解析しました。その結果、少数派有利な選択圧をもたらす遺伝子座を五番染色体上に発見しました。この遺伝子座一つだけでも、異なる対立遺伝子をもつ個体を混植させると、同じ対立遺伝子の単植に比べて収量が3%増加していました。さらに、周辺のDNA配列パターンを解析したところ、五番染色体上の遺伝子座の近くには多様性が長期間にわたって維持されてきた形跡が残っており、そこには根の伸長に関わるとされる遺伝子が見つかりました。これらの結果は、根の競争緩和によって少数派の遺伝子型が有利になる自然選択が生じ、その結果として収量が上がったことを示唆しています。
少数派が有利となる選択圧が集団の生産性を向上させることは理論的に知られていましたが、このことを示した遺伝解析は本研究が初めてです。特定の遺伝子座を狙った混植は、異なる種や品種を混植するよりも、栽培の手間の観点から実用的と言われています。したがって、本研究で確立した方法は、作物の競争緩和に応用できる可能性があります。
なお、本研究成果は、日本時間2026年6月11日(木)公開のPhilosophical Transactions of the Royal Society B誌にオンライン掲載されました。
論文名:Negative frequency-dependent selection underlies overyielding through neighbour genotypic effects in Arabidopsis thaliana(負の頻度依存選択は隣の遺伝子型の影響を介してシロイヌナズナの収量を増加させる)
URL:https://doi.org/10.1098/rstb.2025.0179
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隣り合って生育するシロイヌナズナの個体(左:札幌市内の屋外にて佐藤安弘撮影)。五番染色体上の遺伝子座における少数派有利な選択圧(中央)と異なる対立遺伝子の混植による収量増加(右:平均±標準誤差)。右側の二つの図は論文のデータを元に平均値の変動に着目して再作図。



















