2026年6月16日
ポイント
●地域的な気候の違いと都市化が、植物の防御形質に関わる遺伝的変異をともに左右することを解明。
●都市化の進化的影響が地域的な気候差の影響と比較しても無視できない大きさであることを定量化。
●都市が地球温暖化など将来の環境変動に対する生物の進化的応答を予測する場となる可能性を提示。
概要
北海道大学大学院地球環境科学研究院の石黒智基研究員(研究当時。現・東京都環境科学研究所研究員)及び内海俊介教授らの研究グループは、北海道4都市に生育するシロツメクサを対象に、都市化が植物の進化に与える影響の大きさを、地域的な気候差の影響と比較して定量化しました。気温、積雪、乾燥などの地域的な気候差は、生物の局所適応を促し、同じ種の中にも地域ごとに異なる特徴をもつ集団を生み出します。一方、近年では都市化も生物進化を引き起こす環境変化として注目されています。都市では舗装面の増加、気温上昇、生物間相互作用の変化などが生じます。しかし、都市化の進化的インパクトが、地域的な気候差と比べてどの程度重要かは分かっていませんでした。
本研究では、函館、札幌、旭川、釧路において、約5,500株のシロツメクサを調査しました。これら4都市の平均気温差は、将来の地球温暖化予測にも相当する規模です。研究グループは、植食者に対する化学防御に関わるシアン化水素(HCN)の生産と、その生産に必要なAc遺伝子クラスター及びLi遺伝子の頻度を調べました。さらに、舗装面など人工的環境の割合、年平均気温、積雪などの都市化に伴う環境変化と、緯度・経度に対応する地域的な気候差の影響を同時に解析しました。その結果、地域的な気候差はシロツメクサの防御形質に関わる進化に大きな影響を及ぼす一方、都市化による環境変化も無視できない影響を持つことが分かりました。特に、HCN生産に必要なAc遺伝子クラスターの頻度に対して、地域的要因である緯度・経度は大きな影響を示しましたが、都市化と強く関連する人工的環境の割合も、それに迫る影響力を持っていました。
本研究は、都市化を、地球温暖化など将来の環境変動を先取りする場として捉え直し、その進化的影響を数値として明らかにした点に意義があります。都市で今起きている進化を理解することで、将来の環境変動に対して生物がどのように応答するのかを予測する手がかりが得られると期待されます。
なお、本研究成果は、2026年6月1日(月)公開のOecologia誌にオンライン掲載されました。
論文名:Urbanization rivals regional climate as an evolutionary driver of white clover(都市化はシロツメクサの進化を駆動する要因として地域的な気候差に匹敵する)
URL:https://doi.org/10.1007/s00442-026-05913-6
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都市化の進化的インパクトは地域の気候差と比べても大きな効果をもつ。写真は、北海道百年記念塔前に繁茂する、本研究の対象であるシロツメクサ(撮影:内海教授)



















