2026年7月3日
ポイント
●人工設計ミトコンドリア「e-MITO」を開発し、細胞内への効率的な導入に成功。
●PEG表面工学と細胞膜透過ペプチド修飾により、細胞導入能の向上を確認。
●細胞内ミトコンドリア呼吸活性の上昇を確認し、「オルガネラ製剤」技術の可能性を提示。
概要
北海道大学大学院薬学研究院の山田勇磨教授らの研究グループは、同大学大学院工学研究院、同大学大学院医学研究院生殖・発達医学分野小児科学教室、同大学総合イノベーション創発機構ワクチン研究開発拠点との連携のもと、ルカ・サイエンス株式会社との共同研究により、人工的に設計・加工したミトコンドリア「e-MITO(Enhanced Artificially Designed Mitochondria)」を開発し、細胞機能を制御する新しいオルガネラ製剤技術を提示しました。
ミトコンドリアは、細胞内でエネルギー産生を担う重要な細胞内小器官であり、その機能低下は老化やミトコンドリア病、神経疾患、心疾患など様々な疾患との関連が報告されています。近年では、正常なミトコンドリアを細胞へ導入する「ミトコンドリア移植」が注目されていますが、単離ミトコンドリアの不安定性や細胞導入効率の低さなどが課題となっていました。
本研究では、単離ミトコンドリア表面へポリエチレングリコール(PEG)脂質を導入し、その末端に、細胞膜透過ペプチド(CPP)を提示する「ミトコンドリア表面工学」を用いることで、人工設計ミトコンドリア「e-MITO」を構築しました。さらに、e-MITOが細胞内へ効率的に取り込まれることを確認しました。また、e-MITOを導入した細胞では、ミトコンドリア呼吸活性やATP産生能の上昇が確認されました。これらの結果は、「ミトコンドリアへ薬を届ける」という従来の発想に加え、「ミトコンドリアそのものを機能性材料として利用する」という新しい概念を示すものです。本研究成果は、人工的に設計したミトコンドリアを利用して細胞機能を制御する新しい基盤技術として、将来的には細胞治療、再生医療、ミトコンドリア疾患研究などへの応用が期待されます。
なお、本研究成果は、2026年7月1日(水)公開のAdvanced Materials Interfaces誌にオンライン掲載されました。
論文名:CPP-PEG-Guided Surface Engineering of Mitochondria Enables Efficient Cellular Uptake and Respiratory Modulation(人工設計ミトコンドリア「e-MITO」による細胞導入と呼吸機能制御)
URL:https://doi.org/10.1002/admi.70583
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