2026年7月10日
北海道大学
パシフィックコンサルタンツ株式会社
鉄道建設・運輸施設整備支援機構
ポイント
●絶滅の危機に瀕しているニホンザリガニが山奥の河川源頭部に高い確率で生息していることが判明。
●北海道新幹線工事に伴う747地点に及ぶ網羅的な環境アセスメントデータを解析。
●ニホンザリガニは「珍しい生き物」ではなく「珍しくなってしまった生き物」である可能性を示唆。
概要
北海道大学大学院地球環境科学研究院の小泉逸郎准教授、同大学大学院環境科学院博士後期課程の賈 煒氏らの研究グループは、パシフィックコンサルタンツ株式会社及び独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)との共同研究により、北海道新幹線建設に伴う大規模な環境アセスメント調査データを活用し、日本唯一の在来ザリガニである絶滅危惧種ニホンザリガニ(Cambaroides japonicus)の本来の生息環境を明らかにしました。
ニホンザリガニは北海道と青森県の一部にのみ分布する日本固有種で、近年、河川改修や森林開発、外来種ウチダザリガニの侵入などにより各地で減少しています。そのため、現在では「希少な生き物」と考えられていますが、人間活動の影響が少ない環境で本来どの程度生息しているのかについては十分に分かっていませんでした。
研究グループは、北海道新幹線建設に伴って実施された環境アセスメント調査のうち、木古内町から札幌市周辺までの区間において収集された、747地点に及ぶ大規模データを解析しました。この調査では、建設予定区間沿線200 km以上にわたり、アプローチの困難な奥山の小沢も含めて網羅的に調べています。
その結果、調査地点の94.4%という極めて高い割合でニホンザリガニが確認されました。また、生息地は幅数十cm、水深5cm程度の小さな河川源頭部に集中しており、広域的には人間活動の少ない森林環境が重要であることが明らかになりました。
これらの結果は、ニホンザリガニがもともと特殊な環境にしか生息できない「珍しい生き物」ではなく、かつては身近に存在したものの、人間活動の影響によって「珍しくなってしまった生き物」である可能性を示しています。
本研究は、北海道新幹線という大規模インフラ事業で蓄積された環境調査データを、絶滅危惧種の保全研究へ活用した事例でもあります。事業者、環境コンサルタント、研究機関が連携することで、社会基盤整備に伴う環境情報を生物多様性保全へ還元できる可能性を示しました。
なお、本研究成果は、2026年7月7日(火)公開のJournal of Crustacean Biology誌にオンライン掲載されました。
論文名:Extensive environmental assessments for the national Shinkansen project reveal high occurrences of endangered Japanese crayfish Cambaroides japonicus (De Haan, 1841) (Decapoda: Pleocyemata: Cambaroides) populations in undisturbed forest streams(北海道新幹線事業に伴う大規模環境アセスメントが明らかにした、未攪乱な森林河川における絶滅危惧種ニホンザリガニの高い生息率)
URL:https://doi.org/10.1093/jcbiol/ruag035
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