2026年7月27日
北海道大学
理化学研究所
京都大学
ポイント
●植物が毒性成分(特化代謝産物)を使って根圏の微生物叢を制御するメカニズムを解明。
●ニコチン分解遺伝子クラスターの水平伝播が細菌の宿主適応を促進することを発見。
●根圏微生物を利用した持続可能な農業生産への進展に期待。
概要
北海道大学教育イノベーション機構の島﨑智久助教、同大学大学院理学研究院の中野亮平教授、理化学研究所環境資源科学研究センターの増田幸子研究員、同白須 賢グループディレクター、同市橋泰範チームディレクター、京都大学生存圏研究所の杉山暁史教授、同矢﨑一史特任教授らの研究グループは、植物が作る毒性成分が根圏の微生物叢の形成にも寄与することを明らかにしました。
植物の根の近傍領域である根圏では、多種多様な微生物がコミュニティー(根圏微生物叢)を形成して生息しています。近年の研究から、根圏微生物叢が病害や乾燥などのストレスを緩和するとともに、栄養吸収を促進することで植物の生育に極めて重要な役割を果たすことが明らかになってきました。そのため、植物がどのように根圏微生物叢を形成し、その機能を制御しているのか、そのメカニズムが注目されています。
本研究では、タバコが作る毒性アルカロイドであるニコチンを特定の根圏細菌(アルスロバクター)が分解・資化することで、根圏微生物叢内における競合優位性を獲得していることが明らかになりました。また興味深いことに、ニコチンは昆虫に対して強い毒性を示す一方で、アルスロバクターを含めた多くの根圏微生物に対して増殖を抑制する効果は認められず、地上部と地下部で異なる生理機能を発揮していることが示唆されました。また、様々な環境から単離されたアルスロバクター属細菌のゲノム情報を比較したところ、アルスロバクターは遺伝子の水平伝播によってニコチン分解遺伝子を獲得することが明らかになり、根圏細菌のダイナミックなゲノムの再編成が、宿主植物との相互作用において重要な役割を担うことが示されました。
本研究成果は、植物代謝産物を介した根圏微生物叢の形成メカニズムの理解を深めるものであり、植物代謝産物を利用して根圏微生物叢の機能を制御することで、微生物の力を活用した持続可能な農業生産技術の開発につながることが期待されます。
なお、本研究成果は、2026年7月15日(水)公開のMicrobiome誌にオンライン掲載されました。
論文名:Horizontal acquisition of nicotine catabolism gene cluster enhances Arthrobacter fitness within tobacco root microbiota(遺伝子水平伝播によるニコチン分解遺伝子の獲得がアルスロバクタ―属細菌のタバコ根圏での競争優位性を高める)
URL:https://doi.org/10.1186/s40168-026-02466-x
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