2026年8月19日
ポイント
●AIの学習に使う大量の画像を、要点を保った少数の合成画像に圧縮。
●見た目がよく似たものを見分ける手がかりを残す新たなデータセット蒸留手法FD²を開発。
●実験では分類精度が最大15.1ポイント向上し、データ保存量や計算量を抑えたAI開発に期待。
概要
北海道大学大学院情報科学研究院メディアダイナミクス研究室の長谷山美紀教授、小川貴弘教授、同大学数理・データサイエンス教育研究センターの李 広助教、浙江大学修士課程の馬 宏旭氏、クイーンズランド大学の王 世傑博士研究員、上海人工知能研究所の周 東展リサーチサイエンティスト、大連理工大学の王 智慧教授、孫 寳利博士研究員らの研究グループは、鳥の種類や車種など見た目がよく似たものの細かな違いを、少量の合成データから学べる、新たなデータセット蒸留(DD)手法FD²を開発しました。FD²により、保存するデータ量や計算量を大幅に抑えながら、見た目がよく似た対象でも高精度に分類できるAIの学習が可能になります。
DDは、大量の訓練データの要点を少数の合成データにまとめる技術です。例えると、AI向けの分厚い教科書を、重要な内容だけを残した要約版にするものです。保存するデータ量や学習時間、計算量を大幅に減らせるため、省資源・省エネルギーなAI開発を支える基盤技術として近年注目を集めています。一方、見た目がよく似た対象を見分けようとする場合、従来法では分類の鍵となる細かな手がかりが失われやすいという大きな課題がありました。FD²は、AIが画像のどこを見ているかを示す注意マップと、種類らしさを表すクラスプロトタイプを利用し、この課題を解決します。具体的には、①同じ種類の合成画像をその種類の代表的な特徴へ近づけ、別の種類から遠ざける、②複数の合成画像が同じ場所ばかりに注目しないようにする、という二つの工夫により、分類の鍵となる複数の場所(例えば鳥なら頭部や翼、車ならライトや車体形状)の情報を、多様な手がかりとして合成データに残します。実際、図1に示すように、FD²の合成画像には、対象を見分ける手がかりとなる複数の部位の情報が保たれていることが分かります。FD²は特定の対象に限らず、既存の手法に簡単に追加できる汎用的な設計であり、実験では分類精度が最大15.1ポイント向上したほか、構造の異なる様々なAIモデルでも効果を確認しました。
なお、本研究成果は、2026年9月8日(火)~12日(土)にスウェーデン・マルメで開催されるコンピュータビジョン分野の主要国際会議The 19th European Conference on Computer Vision(ECCV 2026)にて発表予定です。
論文名:FD²: A Dedicated Framework for Fine-Grained Dataset Distillation(FD²:細粒度データセット蒸留のための専用フレームワーク)
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