2026年8月20日
北海道大学
科学技術振興機構
ポイント
●ミトコンドリア成分を送達するナノカプセル「Trans MIT」を開発。
●細胞内ミトコンドリア機能の活性化(呼吸活性・エネルギー代謝の向上)を確認。
●ミトコンドリアを"薬"として利用する新しい細胞機能制御技術の可能性を提示。
概要
北海道大学大学院薬学研究院の山田勇磨教授らの研究グループは、同大学大学院工学研究院、大学院医学研究院、総合イノベーション創発機構ワクチン研究開発拠点との連携のもと、ケンブリッジ大学、東京農工大学大学院工学研究院生命工学部門及び北海道医療センターとの国際共同研究により、ミトコンドリア成分を細胞内へ送達するナノカプセル「Trans MIT」を開発し、ミトコンドリア機能を外部から制御する新技術を提示しました。
ミトコンドリアは細胞のエネルギー産生を担う重要な細胞小器官であり、その機能低下は様々な疾患や細胞機能異常と関連しています。しかし、ミトコンドリアは二重膜構造を有するため、外来分子を効率的に導入することはこれまで困難とされてきました。本研究では、ミトコンドリア成分をナノカプセルに封入して細胞内へ送達する新しいアプローチを構築しました。Trans MITを培養細胞に適用した結果、ミトコンドリア呼吸活性(酸素消費速度)の上昇及び細胞内エネルギー代謝の活性化が確認されました。また、代謝解析により、TCA回路(クエン酸回路)やATP(アデノシン三リン酸)産生に関連する代謝経路の活性化が示唆され、ミトコンドリア機能の変化が細胞全体の代謝状態に影響を与えることが示されました。
本研究は、遺伝子導入による細胞改変とは異なり、ミトコンドリア成分を利用して細胞機能を変化させる新しい「細胞機能改変技術」の可能性を提示するものです。さらに、「ミトコンドリアを薬として利用する」という新しい概念に基づき、細胞機能制御や再生医療などへの応用が期待されます。
なお、本研究成果は、2026年8月19日(水)公開のMaterials Today Advances誌にオンライン掲載されました。
論文名:Trans MIT: microfluidically fabricated lipid nano capsules for robust intracellular delivery of mitochondria-derived components and metabolic enhancement(ミトコンドリア成分で細胞機能を制御する脂質ナノカプセル「Trans MIT」の開発)
URL:https://doi.org/10.1016/j.mtadv.2026.100912
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