2026年8月19日
北海道大学
東洋大学
ポイント
●冬に頭骨が縮小し春に回復する「デーネル現象」をアジアのトガリネズミ類で初めて確認。
●脳函は冬に縮小する一方、吻部(鼻先)は逆に拡大する新たな季節変化の現象も発見。
●哺乳類の柔軟な越冬戦略の理解や、脳組織の可逆的変化研究への応用に期待。
概要
北海道大学低温科学研究所の大舘智志助教、東洋大学生命科学部の池田悠吾助教(元東京大学、日本学術振興会)らの研究グループは、北海道に生息する小型哺乳類であるオオアシトガリネズミ(真無盲腸目、トガリネズミ科)の頭骨形態と体重を一年を通して解析し、冬季に頭骨が一旦縮小し、春に再び成長する「デーネル現象」を、日本産トガリネズミで初めて詳細に検証しました。
研究グループは、北海道大学植物園に収蔵された136個体の標本を対象に、頭骨各部や体重の計測学的研究に加え、幾何学的形態測定法を用いた解析を行い、頭骨形態の詳細な季節変動を調べました。その結果、脳を収容する脳函部は冬に著しく縮小し春に回復する一方、吻部(鼻先)は逆に冬季に拡大し春に縮小することを明らかにしました。前者は日本を含めてアジア初の確認であり、後者はこれまで知られていなかった「逆デーネル現象」の世界初の発見です。
これまでデーネル現象は「冬に頭骨や体全体が縮小する現象」と考えられてきましたが、本研究により、頭骨は一様に縮小するのではなく、部位ごとに異なる方向へ増減することが、詳細に示されました。特に、冬眠をしない小型哺乳類で、このような大規模かつ可逆的な形態変化が起きていることは、寒冷環境への複雑な適応を示す興味深い例といえます。本成果は、寒冷地に生息する小型哺乳類の越冬戦略の理解に重要な知見を与えるだけでなく、脳や骨組織が季節に応じて縮小・再構築される仕組みを理解する手がかりになる可能性があります。さらに、哺乳類の認知機能の再生とも関連する脳の構造の可逆的変化に関する研究への波及も期待されます。
なお、本研究成果は、2026年8月19日(水)公開のProceedings of the Royal Society B誌にオンライン掲載されました。
論文名:Dehnel's phenomenon is not a simple reduction of size: Seasonal change in skull shape of the long-clawed shrew (Soricidae, Mammalia)(デーネル現象は単純な縮小ではない ― オオアシトガリネズミにおける頭骨形状の季節変化)
URL:https://doi.org/10.1098/rspb.2026.0244
詳細はこちら




















