2026年8月19日
ポイント
●タンパク質の立体構造を反映した分子構造情報を取得する新たな分析基板「c-AuTAG」を開発。
●簡易なラマン分光装置でキラリティを反映した分子構造情報を迅速・高感度に取得。
●タンパク質の状態変化を簡便に評価する新たな分析技術として期待。
概要
北海道大学電子科学研究所の三友秀之准教授、同大学大学院生命科学院博士後期課程のエムディ アブドゥル カイユン氏らの研究グループは、タンパク質の立体構造を反映した情報を微量試料から高感度に取得できる新しい分析基板「c-AuTAG」を開発しました。
タンパク質の立体構造や糖修飾などの状態変化は、アルツハイマー病や糖尿病をはじめとする様々な疾患と深く関係していることから、それらを簡便かつ高感度に評価できる分析技術が求められています。従来、タンパク質の立体構造を反映した情報を得る手法として、左右円偏光を用いるラマン光学活性(ROA)が知られています。しかし、ROAは専用の偏光光学系を必要とし、信号も極めて弱いことから、高濃度試料や長時間測定が必要でした。本研究では、L体またはD体のペプチドで修飾した三角形プレート状金ナノ粒子の集積膜とゲルを組み合わせた新しい分析基板「c-AuTAG」を開発しました。この基板では、ゲルを通じて試料中のタンパク質を金ナノ構造間に形成される強い電場領域へ効率的に導入することで、表面増強ラマン散乱(SERS)信号を高感度に取得できます。さらに、L体及びD体のペプチドで修飾した2種類の基板で同一試料を測定し、それぞれのラマンスペクトルの差を解析することで、通常のラマン分光装置を用いて、ROAで得られるようなタンパク質の立体構造を反映した分子構造情報を、微量試料から短時間かつ高感度に取得できることを示しました。さらに、ヘモグロビンや糖化ヘモグロビン(HbA1c)の解析を通じて、タンパク質の立体構造や糖付加に伴う状態変化を高感度かつ定量的に評価できる可能性を示しました。
本技術は、タンパク質の状態を簡便に調べる新たな分析法として、基礎研究から将来の疾患関連分析まで幅広い応用が期待されます。
なお、本研究成果は、2026年8月17日(月)公開のACS Sensors誌にオンライン掲載されました。
論文名:Peptide-Induced Chiral Plasmonic Hotspots for Ultrasensitive Chirality-Dependent Raman Analysis of Proteins(ペプチド誘起キラルプラズモニックホットスポットを用いたタンパク質の超高感度キラリティ依存ラマン分析)
URL:https://doi.org/10.1021/acssensors.6c03237
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