2026年9月17日
北海道大学
国立極地研究所
海洋研究開発機構
東京海洋大学
ポイント
●水温・塩分・溶存酸素・水圧から、氷河由来の淡水を三次元的に推定する新手法を開発。
●トッテン棚氷とモスクワ大学棚氷の淡水供給量を、それぞれ年間70±7、53±9 Gtと推定。
●衛星観測だけでは捉えにくい海中の融解水分布を広域・継続的に監視する手法への発展に期待。
概要
北海道大学大学院地球環境科学研究院の渡辺 豊特任准教授、同大学低温科学研究所の平野大輔准教授、国立極地研究所の真壁竜介准教授、海洋研究開発機構の中野善之副主任研究員、東京海洋大学の溝端浩平准教授らの研究グループは、東南極のトッテン棚氷とモスクワ大学棚氷周辺で、氷河・棚氷の融解によって海へ加わった淡水を三次元的に推定する新しい解析手法を開発しました。
南極の棚氷の下には比較的暖かい海水が入り込み、底面を融かします。しかし、融けた淡水が海のどこに、どの程度広がっているかを直接観測することは容易ではありません。本研究では、海水中の溶存無機炭素(DIC)を、水温・塩分・溶存酸素・水圧から推定する「重回帰分析とニューラルネットワークを組み合わせた手法」を構築しました。海洋内部の物理・生物学的な変化から予測されるDICとの差を利用することで、従来必要だった淡水の端成分組成をあらかじめ設定せずに、氷河由来の淡水の割合を推定できます。
2012~2024年の観測に適用した結果、淡水の影響は棚氷前面から沖合のおよそ南緯64度まで広がっていました。また、代表的な海流輸送量を用いると、淡水供給量はトッテン棚氷で年間70±7ギガトン(Gt)、モスクワ大学棚氷で年間53±9ギガトンと見積もられ、衛星観測による推定と概ね整合しました。
なお、本研究成果は2026年9月11日(金)公開のNature Communications誌にオンライン掲載されました。
論文名:Three-dimensional reconstruction of glacier-derived freshwater in East Antarctica using an end-member-independent hydrographic parameterization(端成分に依存しない海洋観測パラメータ化による東南極の氷河由来淡水の三次元復元)
URL:https://doi.org/10.1038/s41467-026-77441-z
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東南極に広がる氷河由来の淡水。2012~2024年の海洋観測から推定した氷河由来の淡水の分布(左)と棚氷底面からの融解水量(右)。氷河由来の淡水の割合はトッテン棚氷とモスクワ大学棚氷の前面で高く、沖合に向かって低下しながらおよそ南緯64度まで広がっていた。



















