2026年10月6日
ポイント
●約60年未解明の抗がん剤「5-アザシチジン」の生合成遺伝子群を発見し、骨格形成機構を解明。
●ピリミジン環から1,3,5-トリアジン環への「骨格編集反応」を触媒する新規酵素AzcAを発見。
●新しい生体触媒や有用物質創製への応用可能性に期待。
概要
北海道大学大学院工学研究院の大利 徹教授(研究当時、現・北海道大学名誉教授)、小笠原泰志准教授(研究当時、現・同研究院教授)、猪熊泰英教授、富山大学和漢医薬学総合研究所の森田洋行教授、台湾中央研究院ゲノミクス研究センターのツンリン・リー教授、福井県立大学生物資源学部の濱野吉十教授、東京大学大学院薬学系研究科の内山真伸教授らの研究グループは、血液がんの治療に用いられている抗がん剤「5-アザシチジン」について、約60年間不明であった生合成機構を明らかにしました。
5-アザシチジンは、骨髄異形成症候群などの血液がんの治療に用いられている核酸系抗がん剤です。化学合成化合物として開発された後、1966年に放線菌が生産する天然物としても発見されました。本研究では、5-アザシチジンを生産する放線菌のゲノム解析から生合成遺伝子クラスターを見いだし、組換え酵素を用いた生化学解析、X線結晶構造解析、クライオ電子顕微鏡解析、同位体標識実験、量子化学計算などを組み合わせて、生合成に関わる酵素の働きを詳細に解析しました。その結果、AzcE、AzcA、AzcB/Cの3種類の酵素が、これまで知られていなかった新規反応を触媒し、5-アザシチジンの塩基部分である5-アザシトシンの骨格をつくることを明らかにしました。なかでもAzcAは、ピリミジン環の炭素-窒素骨格を再構築する「骨格編集反応」により、5-アザシトシンに特徴的な1,3,5-トリアジン環を形成する新規酵素です。また、AzcB/Cは珍しい脱炭酸反応を触媒することも分かりました。本成果は、長年医薬品として利用されてきた天然物の生合成に隠されていた新しい酵素化学を明らかにするものであり、今後、酵素を利用した新たな分子骨格変換や有用物質の創製につながることが期待されます。
なお、本研究成果は、2026年9月7日(月)公開のNature Catalysis誌にオンライン掲載されました。
論文名:Enzymatic skeletal editing reaction forming the 1,3,5-triazine core during biosynthesis of the anticancer nucleoside analogue 5-azacytidine(抗がん性ヌクレオシドアナログ5-アザシチジンの生合成において1,3,5-トリアジン骨格を形成する酵素的骨格編集反応)
URL:https://doi.org/10.1038/s41929-026-01611-x
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