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「実験のラストマイル」をAIでつなぐ~現場ノウハウを動画から手順書にし、「根拠がなければ答えない」実験支援AI~(工学研究院 教授 三浦 章)

2026年10月28日

北海道大学
Quantum Nexus株式会社

ポイント

●実演動画を、動画解析AIが映像と音声から構造化手順書に変換。
●現場でしか分からない知識(ローカルな運用・安全動作・細かな操作)を文書化。
●根拠がなければ推測せず、教員への相談を促す安全なアシスタントを実現。

概要

北海道大学大学院工学研究院の三浦 章教授、笹原悠輝助教、鱒渕友治准教授、同大学大学院総合化学院博士後期課程の出村萌々香氏、同大学大学院情報科学研究院の浅井哲也教授、Quantum Nexus株式会社の三津井親彦氏らの研究グループは、実験室で人が身につけている現場固有の運用知識を、実演動画から手順書にし、人が承認した文書だけを根拠に質問へ答え、根拠がなければ推測しないAIアシスタントの仕組みを開発しました。

新しい学生や新入社員に、論文と手順書だけを渡して実験を進めることは困難です。それは、その現場でしか通用しないルール、装置の状態を音や表示灯で見極める判断、試料の置き方のような細かな操作など、文書化されにくい知識が重要な役割を果たすためです。これらは手順書には書かれず、先輩から後輩へ口頭と実演で伝えられ、人が入れ替わるたびに失われてきました。研究グループは、論文や説明書のような正式な文書と、確実な実験の実行に必要な知識との隔たりを「実験のラストマイル」と名づけ、対象の作業ごとに専用の装置やセンサーを導入することなく、これを継承する方法を示しました。

本研究では、粉末X線回折(pXRD)装置の操作を題材とし、一人称視点で撮影した操作動画を、Quantum Nexusが構築した動画解析AI(マルチモーダルAI)の処理パイプラインで手順書に変換しました。また、指導教員が確認・承認してから知識源とするヒューマン・イン・ザ・ループの運用としました。回答は、承認済み手順書だけを根拠とする検索拡張生成(RAG)と、根拠がなければ推測させないプロンプト制約の二層で制限し、書かれていないことは答えずに指導教員への相談を促します。105問の試験では、範囲外・安全回避の86問中83問(96.5%)で手順を生成せず安全に応答し(安全な拒否)、根拠のない内容や危険な操作は一度も生成しませんでした。

本成果は、熟練者の退職や担当者の異動で失われる「暗黙知の形式知化」と技能伝承、業務の属人化の解消という製造業・研究開発の共通課題に対し、大きな設備投資を伴わない解決への道筋を示すものです。

なお、本研究成果は、2026年10月17日(土)公開のDigital Discovery誌にオンライン掲載される予定です。

論文名:Bridging the Experimental Last Mile: Digitizing Laboratory Know-How for AI-Assisted Support with Safe Refusal(実験のラストマイルを埋める:安全拒否を備えたAI支援に向けた研究室ノウハウのデジタル化)
URL:https://doi.org/10.1039/D6DD00505E

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