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ゲノム編集農産品を遺伝子組換えでないと証明する方策の提言~リスク評価体系の合意に向けて~(安全衛生本部 教授 石井哲也)

2021年12月8日

ポイント

●ゲノム編集生物の農業応用において遺伝子組換え生物でないと誤判断する要因を分析。
●試薬や培地の点検と,異なるDNA解析法を組み合わせた,より信頼性高い証明方策を提案。

●本提言が日本におけるゲノム編集農産品のリスク評価体系の確立と合意の形成に寄与することを期待。

概要

北海道大学安全衛生本部の石井哲也教授らは,外来DNAがあるゲノム編集生物を遺伝子組換えではないと誤判断してしまう問題に取り組み,より信頼性の高い非組換え証明方策を見出しました。

農業分野で遺伝子改変技術,ゲノム編集を用いた動植物の育種が急速に進んでいます。日本など少なくとも7か国は,事業者がゲノム編集農産品に外来DNAがないと証明できるなら遺伝子組換え生物として規制しないという振興政策を採っています。しかし,外来DNAを見逃して非組換えと誤判断した問題が起きました。そもそも,ある事象の非存在の証明は疑義を招きがちです。

本研究グループは,ゲノム編集で意図しない遺伝子組込みが起きた論文や,国外規制当局がゲノム編集動物を誤って組換えではないと判断したケースを詳細に分析しました。その結果,ゲノム編集農産品に外来DNAが存在しないと証明するには,まず,外来核酸(DNARNA)が①ゲノム編集の試薬や,②細胞培養の培地に含まれるか慎重に確認する。含まれる場合,③ゲノム中の組込みリスクがある3部位について,標的部位のDNAシーケンシングに加え,原理などが異なる複数のDNA分析法により得られた解析データをもって証明することが妥当と結論しました。

一方,対話を経た社会的合意があるならば,この外来DNA非存在の証明方策を緩和して施行する,逆に,特定農産品については適用の見送りもありえます。本研究を踏まえた提言が日本におけるゲノム編集農産品のリスク評価体系の確立と合意の形成に寄与することを期待します。

なお,本研究成果は,2021127日(火)公開のTrends in Biotechnology誌にオンライン掲載されました。

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