2025年5月7日
ポイント
●AIによる新しい骨層分離技術Bone Layer Separation GAN(BLS-GAN)の研究開発に成功。
●BLS-GANにより、高品質な骨層画像を生成し、合理的な骨の特徴と質感を保持することが可能。
●関節リウマチの診断・モニタリング・予後評価の包括的な分析研究が可能となることを示唆。
概要
北海道大学量子集積エレクトロニクス研究センターの池辺将之教授、同大学大学院保健科学研究院の神島 保教授、同大学大学院保健科学院修士課程の王 昊霖氏、東京科学大学総合研究院の鈴木賢治教授、欧 亜非博士研究員らの研究グループは、AIによる関節X線画像の複雑な骨層分離技術の研究開発に初めて成功しました。
従来のX線撮影は、骨軟部(MSK)疾患の診断や経過観察、予後評価に広く活用されてきました。しかし、関節のX線画像では骨陰影が重なって映ることが多く、画像診断医や診断支援アルゴリズムによる正確な骨の評価を妨げる要因となっていました。こうした課題を解決するため、新たに「骨層分離(Bone Layer Separation)」技術を研究開発しました。この技術は、関節X線画像内の重なった骨領域を分離することで、それぞれの骨層を独立して評価できるようにするものです。これにより、MSK疾患の診断精度向上や診断の自動化が期待されます。
本研究では、この骨層分離技術を実現するため、「Bone Layer Separation GAN(BLS-GAN)」というAIフレームワークを開発しました。加えて、従来のX線撮影の原理を応用したリコンストラクターを導入し、効率的な画像再構成を実現しています。これにより、骨陰影が重なった領域に存在する軟部組織の影響を抑え、計算の不安定性を軽減しました。また、AIの学習を安定させるため、合成画像を用いた事前学習を行いました。生成された骨層画像は視覚的チューリングテスト(Visual Turing Test)を通過し、AIによるX線画像生成精度向上にも寄与することが確認されました。これにより、関節リウマチなどの関節疾患の診断・モニタリング・予後評価における、より詳細な分析が可能となり、医療現場での診断支援や研究の発展につながることが期待されます。
本研究成果は、2025年2月25日(火)から米国フィラデルフィアで開催されたAI関連国際会議AAAI Conference on Artificial IntelligenceのMain Technical Trackに採択されました。
論文名:BLS-GAN: A Deep Layer Separation Framework for Eliminating Bone Overlap in Conventional Radiographs(BLS-GAN:従来のX線画像における骨の重なりを解消するための深層層分離フレームワーク)
URL:https://doi.org/10.1609/aaai.v39i7.32826
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