2025年5月1日
ポイント
●好中球と好中球細胞外トラップについて基礎的事項を分かりやすく説明。
●好中球と糸球体構成細胞の相互作用についての最新知見を整理。
●腎疾患の病態形成における好中球と好中球細胞外トラップの役割について詳細に解説。
概要
北海道大学大学院保健科学研究院の石津明洋教授、益田紗季子講師、西端友香講師、同大学大学院医学研究院の中沢大悟講師、楠(渡辺)加奈子助教、北海道大学病院の外丸詩野准教授らの研究グループは、腎疾患における好中球と好中球細胞外トラップの役割についての総説を発表しました。
好中球は末梢血白血球中の最多の免疫担当細胞で、従来は均質な細胞集団とみなされていましたが、近年、異なる遺伝子発現プロファイルと免疫特性を持つ多様な細胞群であることが分かってきました。感染などの刺激により活性化された好中球は、刺激の種類とそれを受け取るサブセットの違いに応じて、サイトカイン、ケモカイン、タンパク分解酵素、活性酸素、好中球細胞外トラップ(neutrophil extracellular traps:NETs)など様々な生理活性物質を放出します。このうちNETsは、脱凝縮したDNAと抗菌タンパクで構成されており、生体内に侵入した病原微生物を細胞外で捕捉・殺菌する重要な自然免疫機構の一つです。NETsは生体防御に不可欠である一方、その細胞毒性、血栓形成性、自己抗原性のために自己損傷のリスクも有しています。好中球とNETsは、急性腎障害、血管炎、全身性エリテマトーデス、血栓性微小血管障害、慢性腎臓病といった腎臓が障害される様々な病態の形成に関与しています。
本総説では、好中球の多様性について、NETsとは何か、好中球と糸球体構成細胞の相互作用について、腎疾患の病態形成における好中球とNETsの役割について、多くの文献を引用し詳述しています。これらを理解することは、好中球の活性化とNETsを標的とした腎疾患に対する新しい治療戦略の開発につながります。
なお、本総説は、2025年3月18日(火)公開のNature Reviews Nephrology誌にオンライン掲載されました。
論文名:Neutrophils and NETs in kidney disease(腎疾患における好中球と好中球細胞外トラップ)
URL:https://rdcu.be/ed4rq
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