2026年6月2日
北海道大学
名古屋大学
ポイント
●南極ラングホブデ氷河で熱水掘削を行い、氷河の底面を直接観測。
●融け水が底面に流れ込んで水圧が上昇し、氷河が加速する現象を南極で初めて確認。
●氷河底の極限環境に、イソギンチャクや海綿動物が繁殖する生態系を発見。
概要
北海道大学低温科学研究所・北極域研究センターの杉山 慎教授、低温科学研究所の箕輪昌紘助教、名古屋大学大学院環境学研究科の近藤 研助教らの研究グループは、第63次日本南極地域観測隊に参加して南極ラングホブデ氷河で熱水掘削を実施し、氷河底面の環境を直接調べました。山岳地域やグリーンランドでは、表面で生じた融け水が氷河の底に流れ込むと摩擦が減り、氷が速く流れることが知られています。しかし南極では氷河の流動と氷の底面を同時に観測することは難しく、同じ現象が起きるかどうか長く議論が続いていました。
今回、厚さ550メートルの氷を底面まで掘削して水圧を測定した結果、融け水が底面に流れ込むことで水圧が急上昇し、氷河が加速する現象が南極でも起きることを初めて確認しました。気候変動に伴って南極の氷が減少傾向にある中、融け水による氷河の加速が更なる氷の流出を引き起こす可能性を新たに指摘するものです。さらに、氷河の底が棚氷の下に広がる海とつながっていることが明らかになり、棚氷下のごく薄い海水層にはイソギンチャクや海綿動物の生息が確認されました。これらの発見は、南極における氷河底面の水理水文環境を明らかにし、極限環境の生態系に新しい知見を示す重要な成果です。
本研究成果は、2026年5月6日(水)公開のNature Communications誌にオンライン掲載されました。
論文名:Acceleration of an Antarctic outlet glacier driven by surface meltwater input to the base(底面に流入した融け水によって南極から流出する氷河が加速する)
URL:https://doi.org/10.1038/s41467-026-72724-x
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