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東京2020オリンピック・パラリンピック選手村の下水中新型コロナウイルス量と陽性者数との関連を解明~下水疫学調査と個人検査は相互補完的、集団を対象とした検査戦略としての普及に期待~(工学研究院 准教授 北島正章)

2022年8月23日

北海道大学
大阪大学
東京大学

ポイント

●選手村の下水検体中の新型コロナウイルスRNA量を高感度検出技術(EPISENSTM法)により測定。
●下水中ウイルス量が陽性者数との相関および陽性者発見の2日前に検出されることを確認。
●下水疫学調査と個人検査を組み合わせた検査戦略がクラスター防止に貢献したことを示唆。

概要

北海道大学大学院工学研究院の北島正章准教授、大阪大学感染症総合教育研究拠点の村上道夫特任教授(常勤)、東京大学大学院工学系研究科の片山浩之教授及び同大学医科学研究所の井元清哉教授らの研究グループは、塩野義製薬株式会社と共同で、2021年に開催された第32回オリンピック競技大会(2020/東京)及び東京2020パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)の選手村において新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の下水疫学調査を実施し(関連するプレスリリース②)、下水中の新型コロナウイルスRNA量と陽性確定者数との相関を解析した結果を報告しました。

研究グループは、東京2020大会開催期間を含む2021714日から98日にかけて、選手村より下水検体を採取し、北海道大学と塩野義製薬が共同開発した高感度検出技術であるEPISENSTM法(旧・仮称:北大・塩野義法)(関連するプレスリリース③)を使用して、下水検体中の新型コロナウイルスRNA量を測定しました。下水検体中の新型コロナウイルスRNA量は陽性者の存在と統計的に有意な正の相関が認められ、さらに下水中ウイルスRNA量の増加は個人検査による陽性者の発見に2日間先行していたことが示唆されました。

選手村での下水疫学調査結果は、他の感染モニタリング指標(陽性者数や市中感染の状況等)と併せて総合的に勘案されることで、パラリンピック期間中に更なる感染防止対策を実施するなどの判断材料の一部として活用されました。下水疫学調査と個人検査は相互補完的なものであり、この検査戦略が選手村内におけるクラスター発生の防止にあたり重要な役割を果たしたと考えられます。本研究の成果は、毎日全員が個人検査を受ける集団に対する下水疫学調査の有用性を示すものであり、ウィズコロナ社会の大規模集合イベントにおける感染対策の一環として下水疫学調査の活用が期待されます。

なお、本研究成果は、2022822日(月)公開のJAMA Network Open誌(オンライン版・オープンアクセス)に掲載されました。

論文名:Association of SARS-CoV-2 load in wastewater with reported COVID-19 cases in the Tokyo 2020 Olympic and Paralympic Village from July to September 2021(東京2020オリンピック・パラリンピック選手村(20217月から9月)における下水中の新型コロナウイルス量とCOVID-19陽性者数の関連)
URL:https://doi.org/10.1001/jamanetworkopen.2022.26822

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