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本学医学部で行われたアイヌ研究に関する総長声明(2026年7月27日)

 北海道大学医学部で行われてきたアイヌ研究に関して、本学はこれまで2冊の報告書を公表しました。本日、これに加えて、3冊目となる『日本学術振興会「アイヌノ医学的民族生物学的調査研究」に参画した北海道帝国大学医学部8講座の研究結果に関する調査報告書』を公表するにあたり、本学医学部において行われてきたアイヌ研究について、改めて深い反省を表明するとともに、アイヌの人びとに対し、心よりお詫びを申し上げたいと思います。

 本学医学部においては、1931(昭和6年)から1977年(昭和52年)にかけて、人類学的研究を目的として、アイヌの人びとのご遺骨を対象とする研究が行われました。これらの研究に関して、本学は、ご遺骨の収蔵経緯に関する調査を実施し、2013年(平成25年)に調査報告書を公表し、2018年(平成30年)には、追加資料に基づく追録を公表しました。

 この間、本学は、2005年(平成17年)に当時の中村睦男総長が、民族の尊厳を尊重しつつ、アイヌをはじめとする先住民族に関する研究教育を全国的・国際的に進めることが本学の責務であると表明し、民族の尊厳に対する適切な配慮を欠いていたことを真摯に反省していることを表明しました。2019年(令和元年)には、当時の笠原正典総長職務代理が、医学部におけるアイヌ研究、とりわけご遺骨の保管・管理について、アイヌ民族の尊厳に対する配慮を欠いており、極めて遺憾であり、改めて真摯に反省していることを表明しました。また、ご遺骨の返還についても、国のガイドラインに従って、対応して参りました。

 本日公表した調査報告書では、1933年度(昭和8年度)から1937年度(昭和12年度)にかけて、北海道帝国大学医学部において行われた「アイヌノ医学的民族生物学的調査研究」の研究結果を具体的に明らかにしています。そこに見られるのは、特定の民族を身体的・精神的に劣っていると決めつけようとする姿勢が、当時の研究の中に存在していたという事実です。本調査研究の多くは、当時の通説を十分に検証しないまま進められたものであり、アイヌの人びとに対する倫理的配慮や尊重の姿勢に欠けていました。そのなかには、客観性を欠いた解釈に基づく分析、現代の学術倫理の観点からは課題を指摘せざるを得ない実験、あるいは、特定の疾患や知能に関する先入観に基づく調査が見られました。また、身体計測の数値に基づく不適切な表現、あるいは、アイヌの人びとの精神文化である儀式に対する理解を欠いた研究姿勢など、アイヌの人びとの尊厳に対する配慮が十分に払われないまま、調査や記述が行われていました。

 さらに、本調査研究が行われていた同時代において、アイヌの人びとから研究に対する批判が示されていたという事実についても、真摯に受け止める必要があります。アイヌのご遺骨の収集に関しても、故人を敬い、弔うという人としての尊厳に対する配慮に欠けていました。本調査研究は、アイヌの人びとに対する差別や偏見を前提とした仮説の下に行われ、その仮説を立証できない状況にあっても、その前提となる差別や偏見を省察せず、さらに一部では立証できない仮説に拘泥しています。これらは何れも本学が定める行動規範(「北海道大学における科学者の行動規範」および「北海道大学行動規範」)に反するものであり、現代の学術研究としても否定されるべきものです。また、本報告書が新たな差別に利用されることは、決してあってはならないことであり、断じて許されるものではありません。

 以上、医学部におけるアイヌ研究が、アイヌの人びとの尊厳を深く傷つけたことを、大学として重く受け止めています。医学部における研究、およびご遺骨と副葬品の収集を含む一連の行為について、真摯に反省し、心を痛めてこられたすべてのアイヌの人びとに対し、心からお詫び申し上げます。

 北海道大学は、この反省を単なる過去の総括にとどめることなく、先住民族の尊厳と権利を尊重する学術の実現に向けて、その責任を果たし続けます。ご遺骨の返還につきましては、現在も国の定める手続きに基づき取り組んでおりますが、そのあり方を巡っては、アイヌの人びとの中に多様なご意見や厳しいご批判があることを認識しています。返還を望むすべての方々の思いにどのように寄り添うことができるのか知恵を絞り、不断の努力を続けてまいります。

 この痛恨の歴史を深く胸に刻み、研究倫理と教育のあり方について見直しを続け、未来に向けて誠実に歩み続けていくことを、ここにお約束します。



2026年727
国立大学法人北海道大学総長 寳金清博