北大とザンビア大学、約40年続く交流の現在地~連携プロジェクトに関する情報交換会を開催

<写真>ザンビア大と北大の情報交換会の参加者ら

北海道大学とザンビア大学は、1985年にザンビア大学獣医学部が設立されて以来、40年以上にわたり共同研究や人材育成などの交流を続けています。北大創基150周年にあたり、ザンビア大のMundia Muya学長ら4名が来校し、9月28日、両大学が取り組む連携プロジェクトの進捗と成果を紹介する情報交換会が開催されました。獣医学から始まり、感染症、環境汚染や農業、衛生、鉱業など多様な分野での共同プロジェクトにまで発展した両大学の取り組みの「現在地」を報告し、学部や分野を超えた新たな協力の可能性を探りました。

北大とザンビア大の共同研究について、高田礼人・人獣共通感染症国際共同研究所長の報告を聴く参加者ら北大とザンビア大の共同研究について、高田礼人・人獣共通感染症国際共同研究所長の報告を聴く参加者ら

情報交換会には、ザンビア大からの来訪者に加え、同大学との連携プロジェクトを率いる北大教員や、北大に在籍するザンビア大出身の学生など約30名が参加しました。

初めに、高田礼人・人獣共通感染症国際共同研究所長が講演し、2005年に人獣共通感染症リサーチセンターが発足して2021年に国際共同研究所へ改組された経緯や、同研究所の概要を説明しました。また、2007年にザンビア大獣医学部内に同センターのザンビア拠点(HUCZCZ)が設置されたことに触れ、「大学院生のころ、ザンビア大学からの留学生と同じ研究室で学び、いつかザンビアで一緒に研究しようと約束したことが、HUCZCZで実現しました」と話しました。

高田所長は、人獣共通感染症の病原体がどこから来るのかに焦点を当てて研究しており、ザンビア大学と連携して現地でコウモリの捕獲や野鳥の調査を行う様子を紹介しました。また、COVID-19の流行初期には北大がザンビアにおける診断の技術支援をしたことや、エボラウイルス病などの迅速診断キットの共同開発も行ったと報告しました。

毒性学が専門の中山翔太・獣医学研究院教授は、鉛や水銀などの重金属汚染を調べており、土壌環境の改善により人・動物・環境を一体で守る「One Health」を目指す「KAMPAI」プロジェクトについて報告しました。このプロジェクトには日本の大学や企業、ザンビア政府など、200人以上の関係者が参加し、成果はザンビア政府への政策提言としてまとめられたと報告しました。2025年には後継事業の「ZAZINAMBO」プロジェクトとなり、日本とザンビアだけではなく、南部アフリカのジンバブエ、ナミビア、ボツワナの4か国が協力するプロジェクトに発展し、来月ザンビアの首都ルサカでシンポジウムを開くことを紹介しました。同じく2025年から北海道大学で開始されたOne Healthを学ぶ学生交流を目的とする世界展開力強化事業「Global NEXUS」も紹介し、「学生交流は、将来の協力と教育のために非常に重要です 」と強調しました。

獣医学研究院の奥村正裕教授獣医学研究院の奥村正裕教授

北海道大学アフリカオフィスの初代所長を務めていた奥村正裕・獣医学研究院教授は、獣医外科医として臨床研究を強化するプロジェクトを進めています。JICAの支援を受け、2021年から必要な検査・医療機器を現地に導入し、更新を進めていることを報告しました。また、同時に獣医師の育成や機器を十分に活用するための教育にも力を入れてきたと話しました。奥村教授は、「ザンビアは食肉の輸出を目指している一方で、南部アフリカでは畜産物の生産と輸出を維持するための獣医専門職が非常に不足しており、育成が急務です」と話しました。

HUCZCZの現センター長を務める澤洋文・ワクチン研究開発拠点(IVReD)拠点長は、IVReDが2022年に国のワクチン開発の拠点の一つに選ばれて以来、どのような活動をしてきたかを紹介しました。澤拠点長は「国内外の研究機関と連携し、ハンタウイルスやCOVID-19などを対象に、ワクチン、診断、治療薬などの医療手段の社会実装を目指しています」と話し、社会実装の例として製薬企業と共同開発したCOVID-19予防薬が米国FDAに承認されたことなどを報告しました。ザンビア大学と共同の疫学研究で、ワニや蚊からのウイルス分離などの成果があることも紹介しました。

コーヒーブレイクで談笑する澤洋文・IVReD拠点長(左端)とザンビア大出身の研究者らコーヒーブレイクで談笑する澤洋文・IVReD拠点長(左端)とザンビア大出身の研究者ら

ザンビア大学との連携は、獣医・感染症学の外にも広がっています。ザンビア大出身で農学研究院博士課程のChristabell Nachilimaさんは、「地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム」(SATREPS)プログラムのもと、2023年に始まった稲の育種プロジェクト「RiceBACS」を報告しました。同プロジェクトは、葯培養技術、先端育種技術、市民科学を組み合わせた取り組みです。Nachilimaさんは、「ザンビアは米の需要が増加している一方で、国内供給体制が未整備です」と指摘。品種の掛け合わせや選別など、市場に出す米の育種にかかる8〜10年の期間を、約1年に短縮できる「葯培養」という手法をザンビアの品種でも使えるようにするため、遺伝子や培養条件を調べていると話しました。

「RiceBACSプロジェクト」の説明をする農学研究院博士課程のChristabell Nachilimaさん「RiceBACSプロジェクト」の説明をする農学研究院博士課程のChristabell Nachilimaさん

人間生態学とグローバルヘルスが専門の山内太郎・保健科学研究院教授は、ザンビアでの研究が2006年、農村部での子どもの成長、栄養、食料安全保障をテーマに始まり、現在は水衛生、トイレなどの環境衛生を含む複数のプロジェクトに広がりをみせていると話しました。研究は、子どもや若者など地域住民と共に進める手法が特徴的で、山内教授は「ザンビアは、最も重要な長期的研究パートナーの一つになっています」と話しました。

ザンビア大関係者らと交流する山内太郎・保健科学研究院教授(右端)と池田敦子・保健科学研究院教授・総長補佐(右から2番目)ザンビア大関係者らと交流する山内太郎・保健科学研究院教授(右端)と池田敦子・保健科学研究院教授・総長補佐(右から2番目)

工学分野にも広がる絆

ザンビア大と北大の交流は、工学分野にも広がっています。資源工学が専門の大竹翼・工学研究院教授は、ザンビアなどアフリカ諸国には、「脱炭素化」の技術に必要な金属・鉱物資源が豊富に存在すると語りました。一方で、鉱山開発に伴う環境汚染が大きな課題になっており、ザンビアだけでなく多くの鉱物資源国に共通する問題になっていると指摘しました。大竹教授は「ザンビアは数年で銅の生産量を3〜4倍にする目標を掲げていますが、環境問題が最大の課題となっています」と話し、JICAの鉱業分野の人材育成プログラム「KIZUNA」を紹介しました。

採掘工学が専門の川村洋平・工学研究院教授は、「日本は脱炭素化を目指すなかで、鉱物への需要が増えています。だからこそ、鉱山の持続可能な開発が重要です」と話し、南部アフリカと北大を含む国内大学との教育プログラムを紹介しました。同プログラムは修士課程から参加でき、資源学、先端スマートマイニング、リサイクル、資源金融や社会科学を学ぶ科目や交換留学により学生らが知見を深める様子を報告しました。

Mundia Muya・ザンビア大学長Mundia Muya・ザンビア大学長

質疑では、ザンビア大のMundia Muya学長からは、「鉱業、創薬、農業など、多様な取り組みを適切に記録して共有し、多くの人に知ってもらうことが、今後の協力を支える上で重要だと思います」との意見が出されました。また、池田敦子・保健科学研究院教授・総長補佐は、「多分野の連携を強め、取り組みを見える化し、長く続く協力につなげていきたいです」と話しました。

意見交換会の前後には、ザンビア大関係者が北大の関係部局や拠点を表敬訪問し、研究・教育連携に関する打ち合わせや研究施設の視察を行いました。

IVReD内の視察の様子(IVReD提供)IVReD内の視察の様子(IVReD提供)

ザンビア大と北大の交流は、獣医学部の交流から始まり、感染症対策、重金属汚染、農業、水衛生、鉱業人材の育成と、40年を経て多分野に広がりを見せています。研究成果の共有だけではなく、人材を育て交流を重ねてきたことが、40年にわたる協力を支えてきました。創基150周年を迎えた北大は、これからもザンビア大学とともに、次世代を担う学生や若手研究者を育てながら、分野を超えた連携を広げていきます。

IVReD玄関前で(IVReD提供)IVReD玄関前で(IVReD提供)

【文・写真:広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 齋藤有香 
取材協力:国際部 国際連携推進本部】