本学名誉博士の柳町隆造さんが「京都賞」を受賞― "Science is not a job. It is a passion."

北海道大学 名誉博士/ハワイ大学 名誉教授 柳町隆造

(6月19日 17:00に柳町先生の受賞コメントを追記)

〈写真〉柳町隆造 北海道大学 名誉博士(ハワイ大学名誉教授)。20227月に北大理学部を訪れた際に撮影したもの(提供:いいね!Hokudai

北海道大学出身で生殖生物学者の柳町隆造さん(北海道大学 名誉博士/ハワイ大学 名誉教授)が、「第38回(2023)京都賞」を受賞しました。「京都賞」は、稲盛財団が創設した科学や技術、思想・芸術の分野に貢献した人々に贈られる国際賞です。歴代受賞者の中には、後にノーベル賞を受賞した方々もいます。
柳町さんの受賞業績は、「受精メカニズムの解明と顕微授精技術確立への貢献」。人工授精による畜産業やヒトの生殖補助医療技術(ART: Assisted Reproductive Technology)の発展に大きく貢献したことが評価されました。

1928年に北海道江別市に生まれ、札幌で育った柳町さん。1952年に北海道大学理学部を卒業後、高校教員などを経て、1960年に北海道大学で博士号を取得しています。1964から1966年には研究生として北海道大学 理学部に在籍しましたが、その後アメリカに渡り、1966年からハワイ大学に着任しました。2002年には北海道大学から名誉学位が授与されています。名誉教授となった現在も研究生活を続けています。

学生時代の柳町名誉博士。前列左から3番目(1952年撮影、提供:柳町隆造 名誉博士) 学生時代の柳町名誉博士。前列左から3番目(1952年撮影、提供:柳町隆造 名誉博士)

柳町さんは、1960年の博士号取得以来、哺乳類の生殖過程のメカニズム解明を目指す基礎研究と、それらを基盤とした生殖補助技術の開発に取り組んでいます。1963年には、培養液中でのハムスターの受精に成功し、世界で初めて再現可能な哺乳類の体外受精を確立しました。また、顕微鏡下で精子を卵細胞質に直接注入する顕微授精技術を開発し、技術革新を重ねています。さらにはクローンマウスの作製にも世界に先駆けて成功し、2000年に英科学誌Natureで発表しています。
こうした柳町さんらの研究グループの功績は、ヒトの生殖医療だけではなく、畜産業や希少動物の保護など、現代社会の発展に大きく貢献しています。

このたびの京都賞受賞を受けて、柳町さんご本人からコメントをいただきました。

"I understand that this award is a recognition of a long hard work by all of my former students, associates and friends who worked hard with me to better understand the process and mechanism of mammalian fertilization, some of which happened to bear practical implications."

(このたびの受賞は、哺乳類の受精のプロセスとメカニズムを理解するために、私と一緒に一生懸命働いてくれた学生たちや、同僚、友人たちの長年の努力を認めていただいたものと思っております。こうした成果の一部が、たまたま実用的な意義を持つものだったのだと思います。)

また、若い方々へ向けてメッセージをいただきました。

"Science is not a job. It is a passion."

柳町さんが、2022年7月に北海道大学を訪れた際のインタビュー映像が、北海道大学理学部のYouTubeチャンネルで公開されています。学生時代の思い出、研究への想い、若い方々へのメッセージが語られています。研究以外の道に進む方にとっても心に響く言葉が散りばめられていますので、ぜひご覧ください。

三脚の原理を携えて 〜柳町隆造先生からのメッセージ〜 / With the tripod principle - Message from Prof. Ryuzo Yanagimachi

4年ぶりに開催される第38回(2023)京都賞授賞式は11月10日(金)に国立京都国際会館で行われ、メダル、ディプロマ、賞金が贈られる予定です。また、2024年3月に米国カリフォルニア州サンディエゴ、5月に英国オックスフォード大学で、受賞者を招いた関連行事が開催される予定です。

柳町さん、このたびの京都賞受賞、誠におめでとうございます。

【広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 川本真奈美】