<写真>文部科学大臣表彰・表彰式の会場にて。左から地球環境科学研究院の大城賢准教授、先端生命科学研究院の山口諒助教、元本学医学研究院の田村友和准教授(4月から九州大学に移籍、現総合イノベーション創発機構ワクチン研究開発拠点客員准教授)、工学研究院の久保田浩司准教授、理学研究院の鈴木悠平准教授
4月8日(火)、文部科学省より、科学技術に関する研究開発や理解増進等において顕著な成果を収めた方を表彰する「令和7年度文部科学大臣表彰」の受賞者が発表され、本学から「科学技術賞(研究部門)」1名、「若手科学者賞」4名の計5名が受賞しました。表彰式は15日(火)に文部科学省で執り行われ、表彰状が授与されました。
本学の受賞者からコメントが届きましたので、ご紹介します。
科学技術賞(研究部門)
青木茂(あおき しげる) 低温科学研究所 教授

受賞業績:東南極域における海洋と氷床の相互作用に関する研究
コメント:
この度は栄誉ある賞をいただき誠に光栄です。この賞は南極観測で実施した成果に対していただいたもので、当然のことながら私ひとりの力で成し得たものではありません。多大なご尽力をいただいた共同研究者や観測事業スタッフの皆さん、そして未知の領域に果敢に挑んでくださった「しらせ」の艦長・乗員の皆さまに深く感謝します。本研究により、これまで安定と言われてきた東南極の氷床も、海洋の熱によって盛んにとけていることが分かりました。もはや南極も聖域ではありません。南極や北極といった極域を科学の目でつぶさに見つめていくことが必要です。次世代の研究者の皆さんとともに、これからも極域を巡る課題に挑戦し続けたいと思います。
研究室ウェブサイト:
低温科学研究所 青木茂
若手科学者賞
久保田浩司(くぼた こうじ) 工学研究院 准教授

受賞業績:メカノケミカル有機合成反応の開発に関する研究
コメント:
この度は、文部科学大臣表彰若手科学者賞を賜り、身に余る光栄に存じます。これまでご指導くださった先生方をはじめ、共に研究を進めてくださった共同研究者の皆様、学生の方々、切磋琢磨してきた仲間、そして日々支えてくれた家族に、心より深く感謝申し上げます。受賞の対象となりました研究は、私が北海道大学に特任助教として着任以来、一貫して取り組んできたテーマです。メカノケミカル合成は、高効率かつ環境調和型の化学反応の開発を可能とする技術であり、持続可能な社会の実現に向けて大きな可能性を秘めています。2023年には、こうした技術の社会実装を目指して株式会社MECHANOCROSSを設立し、産業界との連携を含む新たな展開へと歩みを進めております。今後もこの北海道の地から、グリーントランスフォーメーションの実現に寄与すべく、研究と教育の両面において全力を尽くしてまいります。引き続き、変わらぬご指導・ご鞭撻を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
研究室ウェブサイト:
有機元素化学研究室
鈴木悠平(すずき ゆうへい) 理学研究院 准教授

受賞業績:非可換力学系と作用素環の研究
コメント:
私の専門分野は作用素環論で、ただでさえ評価されにくい純粋数学の中でもひときわクセの強い分野だと思いますが、推薦していただいた北海道大学、推薦書を書いていただいた先生方、高く評価していただいた文部科学省に感謝します。私の研究者人生は運や巡り合わせに助けられてきた部分が大きいと思います。現在、自身の中心的な研究課題のひとつとなっている「非可換従順作用」も、誰かが少し立ち止まって真剣に考えていれば、とっくの昔に見つけられ、調べ尽くされていても全くおかしくなかったはずのものでした。それがなぜかほとんど全く手付かずのまま、宝の山が埋もれていたのです。今後も思い込みやバイアスの魔術にかからないよう注意深く研究を続けていきたいです。
研究室ウェブサイト:
理学研究院 数学部門
⼤城 賢(おおしろ けん)地球環境科学研究院 准教授

受賞業績:脱炭素社会実現に向けたエネルギーシステムのモデリング研究
コメント:
この度若手科学者賞を受賞し、大変光栄に思います。受賞対象となった研究は、気候変動の抑制・脱炭素社会の実現に向けて、社会やエネルギーシステムをどのように変えていく必要があるのか、数理モデルを作ってシミュレーションを行うものです。私自身は博士後期課程から本研究に着手しましたが、これらは共同研究グループにおける長年の研究蓄積の上に成り立ったものであり、共同研究者や前職の京都大学のスタッフなど、関係者の皆様に深く御礼を申し上げます。北海道は、再生可能エネルギー拡大をはじめ脱炭素社会実現に向けた重点地域の一つです。これからも北海道大学から研究成果を発信して参りますので、今後ともよろしくお願い致します。
研究室ウェブサイト:
環境科学院 大城研究室
山口諒(やまぐち りょう) 先端⽣命科学研究院 助教

受賞業績:⽣物多様性の進化的起源に関する理論研究
コメント:
この度、文部科学大臣表彰 若手科学者賞という名誉ある賞をいただき、大変光栄に存じます。本賞に推薦してくださった個体群生態学会をはじめ、学内外の関係する全ての皆様のご協力により、これまで私の研究活動を続けることができました。大変嬉しく思うと同時に、関係の皆様に深く感謝を申し上げます。今回受賞対象となった研究は、生物多様性の起源を進化的に理解するための理論構築に関するものであり、北海道大学に異動してからより一層集中して取り組むことのできた課題でした。本受賞を励みに、数理モデルを用いた進化生態学の発展を通して社会に貢献できるよう努めてまいります。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
研究室ウェブサイト:
数理生物学研究室
皆さん、改めましてこのたびの受賞、おめでとうございます。
【文・写真 広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門 齋藤有香】