【Academic Fantasista 2023】札幌日大高校で3名の研究者が出張講義を実施

2月7日(水)札幌日大高校にて、3名の研究者が講義を行いました。

「流れの中で進む新しい有機化学」理学研究院 教授 永木愛一郎

有機化学を専門とする永木さんは、近年、学術的にも産業的にも注目されているフロー合成を紹介しました。フロー合成は、従来のフラスコなどで行う合成法とは異なり、原料をパイプなどに連続して流して反応させて目的の化合物を得る方法です。細い流路内に原料を連続的に供給することで高速に混合でき、短時間で合成できることなどがメリットです。実際に永木教授たちが開発したフロー合成の反応器「フローマイクロリアクター」では、秒単位で精密な反応制御ができるといいます。講義の最後に永木さんは、「ちょっとした発想の転換で常識を変え、社会に貢献できる」と化学の魅力を生徒たちに語りかけました。生徒からは「今までフラスコなどで行っていた反応が『流れ』の中でも行えることやその仕組みを聞いて、とても面白かった」「何か熱中することを見つけなさいという先生の教えが心に響いた」との感想が寄せられました。

生徒たちへ有機化学について解説する永木教授 生徒たちへ有機化学について解説する永木教授

日時:2024年2月7日(水)13:30-14:40、14:40-15:40

会場:札幌日本大学高等学校

参加生徒:1年生 1回目は14名、2回目は13名 計27名

「 健康に暮らすための室内環境とは」保健科学研究院 教授 池田 敦子

環境疫学を専門にしている池田さんは、自身の研究について、特にこどもを対象に長期に渡って調査を行ったり、室内環境や化学物質に曝されることで健康にどのような影響が出るかを調べていると話しました。そのうえで、1日の約9割を室内で過ごす私たちにとって、自宅や学校の環境が体にとっていかに重要であるかを説明。近年は、乾燥が気にされる傾向にあるものの、過度な湿度はシックハウス症候群やアトピーに影響すること、また、化学物質の濃度に比例してこどもにアレルギー性結膜炎などの症状が増える事例を解説し、換気の重要性など実生活で私たちが気を付けられることを生徒たちに伝えました。講義終盤では、測定機器を使って二酸化炭素濃度などを測る体験もあり、生徒たちは、いつもとは違った視点で身の回りの環境に目を向けていました。講義を受けた生徒からは「健康に過ごすためには室内環境に気を使うべきだということを学んだ」「実際に教室の空気の二酸化炭素濃度を測定して場所による違いを考察したのが楽しかった」との感想が寄せられました。

測定機械を使って生徒たちに室内の測定を体験させる池田教授 測定機械を使って生徒たちに室内の測定を体験させる池田教授

日時:2024年2月7日(水)13:30-14:40、14:40-15:40

会場:札幌日本大学高等学校

参加生徒:1年生 1回目は18名、2回目は18名 計36名

「細胞の環境応答システムを見てみよう!」医学研究院 教授 大場雄介

細胞を研究対象としている大場さんは、それらをマイクロメートル単位で観察していると話し、見えるか見えないか分からないものをちゃんと見ようとする拡大鏡が顕微鏡であると説明しました。また、身近な拡大鏡として虫眼鏡を取り上げ、虚像ができることで物が大きく見える凸レンズの仕組みを解説。その後は、紙と小さなレンズで作れる顕微鏡を使い実習を行いました。生徒たちは、自力で顕微鏡を作りそこにプレパラートをはめて細胞を観察するという経験に夢中になっている様子でした。実習後、大場さんは自身の研究に触れ、動的恒常状態にある私たちの細胞が周囲の環境変化に対して見せる素早い反応を可視化していると話し、その研究を支えている蛍光タンパク質について解説して講義を締めくくりました。講義を受けた生徒からは「小さなレンズでも顕微鏡になるということにとても驚いた」、「顕微鏡を組み立てて、実際に使ってみることができて面白かった」と体験型の講義を楽しんだ声のほかに、「蛍光タンパク質についての話も面白く、北大の研究にすごく興味が湧いた」との声も聞かれました。

生徒と顕微鏡を組み立てる大場教授 生徒と顕微鏡を組み立てる大場教授

日時:2024年2月7日(水)13:30-14:40、14:40-15:40

会場:札幌日本大学高等学校

参加生徒:1年生 1回目は15名、2回目は17名 計32名

(広報・社会連携本部 広報・コミュニケーション部門)

アカデミックファンタジスタとは?

北海道大学の研究者が知の最前線を出張講義や現場体験を通して高校生などに伝える事業、「アカデミックファンタジスタ(Academic Fantasista)」。内閣府が推進する「国民との科学・技術対話」の一環として、北海道新聞社の協力のもと2012年から継続的に実施しています。今年度は北海道の高校等を対象に31名の教員が講義を実施しています。2023年度の参加教員はこちら

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